【第58回】
偏食、濃い味好きになってきたら…
味覚障害(上)
最近、薄味が感じられなくなった、濃い味付けが好きになったという人は、味覚障害の可能性を考えた方がいいかもしれない。高齢化や若年層に目立つ片寄った食生活などが原因となる味覚障害が増えているからだ。
味は舌に広がる味蕾(みらい)が情報を感じ取って脳に伝える。この伝達経路に何らかの異常が起こると味覚障害となって表れる。その程度によって、味を全く感じない味覚消失、全体的に味覚が低下する味覚減退などと分類されている。特定の味しか分からない解離性味覚障害、本来の味を他の味に感じてしまう異味症、すべての味を嫌な味と感じる悪味症などもある。
味覚障害を専門テーマとしている生井明浩・日本大学医学部講師(日大練馬光が丘病院耳鼻咽喉科科長)は「最近の学会のデータでは、年間24万人が新たに味覚障害を起こしていると推計しています。身近な病気になりつつあるといっていいと思います」という。
人の感じる味は、甘み・塩辛味・酸味・苦み・うま味の5つの基本味がある。味覚は食べ物の有害物質や毒物の識別など重要な働きもしている。味覚障害そのものは命にかかわる病気ではないが、放置しておいていいものではない。
生井講師は「味が分かりにくくなると糖分や塩分が多い、濃い味付けの料理を好むようになります。若い人なら将来、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を招く一因になります」と早めの治療を勧める。
診断はつきやすい。耳鼻咽喉科で、ろ紙ディスク検査や電気味覚検査をすると分かる。味覚障害は全体として7〜8割は治る病気だが、発症から半年以上たつと、治癒率は5割程度に下がる。早期発見の心構えも必要ということになる。
「治療は原因に応じて行われますが、その原因がさまざまあって、それぞれが関係している場合もあります。味覚障害を起こしている理由をきちんと見つけることが重要です」と生井講師。原因が分かれば予防にもつながる。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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