【第70回】
言語、思考、記憶…生活に支障
高次脳機能障害(上)
脳は身体活動から知的・精神活動まで、さまざまな機能をつかさどっている。病気や交通事故などによって傷つくと、命に別状がなくても影響が大きい。「言語、思考、記憶、行為、学習、注意などに障害が起きた状態を高次脳機能障害と呼びます。本人も自覚していないことがあることから見えない障害の側面もあります」と武田克彦・日赤医療センター神経内科部長は説明する。
“見えない”ことから適切な治療を受けられず、国の障害者支援制度から漏れるケースも少なくない。厚生労働省では01年度から実態把握に取り組み、高次脳機能障害を負っている人は、現在30万人ほどと推計しているが、もっと多いとする専門家もいる。
「高次脳機能障害は社会生活に支障をきたします。改善するためにはリハビリを中心とした治療が必要です。早期の対応が重要になってくる場合もあります。その割には医療関係者を含めて認知度が低い」と武田部長は心配する。
高次脳機能障害を起こす原因として1番多いのは、脳卒中(脳出血および脳こうそく)。高齢社会を迎えた日本は諸外国と比較しても発症比率が高い、とされる。平成14年患者調査(厚生労働省)では、脳血管疾患の継続的な治療を受けていると推測される患者数は137万4000人。男女ほぼ半々となっている。
交通事故などの脳外傷では高次脳機能障害に加えて、性格変化(前と違っておとなしくなった、あるいは怒りっぽくなるなど)がみられることがある。「これらは検査値のように異常がはっきりとらえられません。患者の自覚症状が乏しいこともあり、家族の方などが注意深く観察して初めて分かることもあります。脳の画像に異常が認められない場合があり、どこまで脳の損傷によるのか分からないことも多いのですが、外傷では最初の衝撃が損傷を受けた部位以外に及ぶことを考える必要があります」と武田部長。
アルコール中毒、一酸化炭素中毒、薬物中毒など中毒疾患も高次脳機能障害の原因となる。ビタミン欠乏症も脳の老化も危険因子だ。無関心ではいられない。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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