【第71回】
リハビリには周囲の励ましも大事
高次脳機能障害(中)
高次脳機能障害では、どこまで回復するか、いわゆる後遺症の問題が1番の関心事になる。
脳のリハビリについての著書もある武田克彦・日赤医療センター神経内科部長は「損傷の程度によりますが、自然と治っていくケースもあります。ある程度固定した症状に対してはリハビリを行います。改善の効果は劇的ではないにせよ認められます」という。
高次脳機能障害原因の1位となっている脳卒中では、手足のマヒや言葉がうまく操れなくなる失語症がよく知られる。運動を伝える神経は脳幹の延髄(ずい)で交叉(さ)するため、左脳に障害が起きると体の右側にマヒが起こる。言語機能は左脳にあるが、利き腕との関係も深い。右利きの人が言語機能をつかさどる左脳部分に損傷を起こした場合、ほぼ100%の確率で失語症が起こる。ところが左利きの人は60%程度の確率になっている。
「左利きの人はおよそ40%が右脳の損傷によって失語症が生じます。女性ではこの言語中枢の偏りが男性のようにはっきりしていない場合があって、失語の回復は女性の方がいいといわれています」と武田部長。
脳の神経細胞は一度壊れると再生しないが、刺激を与えるリハビリをすることで、別の道での回復がなされると考えられている。サルの実験では破壊された脳の神経細胞が担っていた機能を、周囲にある神経細胞が徐々に代行するようになることが確認されている。
失語症の症状はいろいろある。流ちょうにしゃべれるが言い間違いが多く内容が伝わらないタイプもある。話すことより書くことのほうが障害の程度が重いケースも多い。「障害を受けた部分の違いが理由。症状に合わせたリハビリが必要です。病初期中程度の失語症なら完全に回復することもまれではありません」(武田部長)。
リハビリには周囲の励ましも大事。肯定的にとらえることで症状の改善が促される。否定的な評価は症状の悪化原因になると、武田部長は注意を呼びかける。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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