【第72回】
理解と支援が社会復帰へのカギ
高次脳機能障害(下)
高次脳機能障害は、周囲および社会の理解と支援が重要なポイントになる。関心が高くなっている痴呆症も高次脳機能に障害を起こしている病気である。脳の高次機能がうまく働かなくなった時、さまざまな症状が表れる。
言葉の障害(失語)、動作の障害(失行)、半側空間無視、認知の障害、記憶の障害、感情の障害など、どれ1つとっても回復には支援が不可欠だが、一般的な認知度の低さから支援体制が整っていない、という問題も抱えている。
高次脳機能障害の治療にあたる武田克彦・日赤医療センター神経内科部長は「症状が1つだけという場合は少なく、実際はいくつかの症状を併せ持っているのが普通です。その分、回復のためのリハビリは長期間になりますし、指導する専門家の数を確保することも大事です」という。
失語症に対するリハビリは言語療法士が担当する。言語療法を行った場合と行わなかった場合を比較した研究では、週3回以上の言語療法を6カ月以上にわたって実行した結果は、話す・聞き取る・読み書きのすべての面で成績がよかった。また国立身体障害者リハビリテーションセンターなどを対象にした症状分析では、半年以内にリハビリをした人は半年以上の人より改善効果が高かった。
「リハビリを始める時期だけがその後の回復具合を決めるわけではありませんが、早期に対応すれば社会復帰の時期も早くなります。標準的なリハビリや社会復帰のための支援プログラムの確立が求められているのも事実です」と武田部長。
高次脳機能障害を起こすと完全に回復しない場合もある。脳には顔を覚える部分があるらしく、相ぼう失認という家族、親類、知人ら頻繁に会っていた人の顔が分からなくなる症状もある。「相ぼう失認でも声を聞けば誰だか分かります。要は総合的に支障を少なくすることが社会復帰を可能にするということです」(武田部長)。そのためにも高次脳機能障害への理解と支援は欠かせない。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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