【第76回】
年間1万5千人前後が発症
くも膜下出血(上)
くも膜下出血は脳血管疾患の中でも命を落とす危険性が高い病気。重い後遺症が残るケースも多い。厚生労働省の患者調査をみると、年間1万5000人前後の人が、くも膜下出血を起こしている。
脳は、硬膜、くも膜、軟膜と3重の膜に覆われている。くも膜と軟膜の間にはすき間があり、髄(ずい)液で満たされている。この部分に出血が広がるのが、くも膜下出血である。くも膜は薄くて血管が浮き出て見え、あたかも蜘蛛(くも)の巣のように見えるところから、この名前が付けられている。
福生吉裕・(財)博慈会老人病研究所(東京・足立区)所長は「くも膜下出血を起こす原因の約8割は、脳の動脈にできた瘤(こぶ)の破裂によるものです。ガツンと金づちで殴られたような激しい頭痛発作が起こるのが典型的な症状」と説明する。
脳動脈瘤(りゅう)は脳内部の小〜中動脈(径1〜6ミリ)に出来るが、なぜ出来るかについては不明なものが大半を占めている。動脈硬化、高血圧、体質を含む家族性などが要因と考えられているが、特定されるまでに至っていない。「当然、瘤が大きくなると破裂する危険性は高まります。CTや脳の血管の形が分かるMRAで動脈瘤が見つかる場合があります。直径5ミリ以上の場合は、脳外科に相談されるのがよろしいでしょう」と福生所長。
動脈瘤は人口の約1%の人にみられるとの報告もあり、最近、日本では脳ドックで精密検査を受ける人が増えてきた。検査方法の進歩からかなり正確に脳動脈瘤の診断ができるようになっている。「未破裂脳動脈瘤は、くも膜下出血の未病です。日本は放射線機械の台数も多く、世界でも積極的に発見、治療している点では最先端を行っています。それでも突然発症し、働き盛りの年齢を襲う病気だけに脳動脈瘤の検査は意味があると思います」と福生所長はアドバイスする。
くも膜下出血の予防治療は、出血を起こした時に行われる治療と基本的に同じものになる。動脈瘤に血液が流れ込まないようにして破裂を防ぐ方法が取られる。予防治療でも手術ミスや後遺症が皆無とはいえない。それだけに十分な説明を受け、納得することも大事になってくる。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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