【第26回】
半夏厚朴湯で嚥下反射が8秒短縮
誤嚥性肺炎(2)
誤嚥(ごえん)性肺炎は、飲食物など誤って肺の方に入った異物が原因で起こる肺炎だ。高齢者の肺炎では一番多く、これを防止できれば、肺炎による高齢者の死はかなり減らすことができる。
そのポイントは、のみ込みと咳(せき)反射の障害を改善することにある。漢方の古典にヒントを得た東北大先進漢方治療医学寄付講座(漢方内科)の岩崎鋼助教授は、さっそく半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を患者さんにのんでもらった。
対象は、脳梗塞(こうそく)など脳血管障害の患者さんで、誤嚥性肺炎を起こした経験のある人。この人達を2つのグループに分け、一方には半夏厚朴湯を4週間のんでもらった。そして、鼻からのどにチューブで少量の水を入れ、ゴクンと飲み込むまでの時間を測定した。つまり、のみ込みの反射が起こるまでの時間を計ったのだ。その結果は、岩崎助教授が目を見張るほどだった。
半夏厚朴湯を飲む前は、2つのグループとも飲み込みまでに11秒前後の時間がかかっていた。岩崎助教授によると「健康な人では1・5秒ぐらいで嚥下反射(のみ込みの反射)が起こります。2秒台までなら安全領域です。これが10秒を越えると誤嚥性肺炎を起こすリスクが非常に高くなる」そうだ。対象とした患者さんたちは、みな高危険群の人たちだったのである。
ところが、わずか4週間後には、半夏厚朴湯をのんでいたグループでは何と飲み込みまでの時間が平均2・6秒前後まで短縮されていた。のみ込みの反射が起こるまでの時間が8秒以上も短くなり、正常域まで回復していたのである。ここまで改善できれば、誤嚥性肺炎を起こす危険はグッと少なくなる。
「西洋薬の中からも嚥下反射を改善する薬を見つけていますが、半夏厚朴湯の方が嚥下反射の改善のしかたはシャープです。まさか、ここまで効果があるとは思いませんでした」と岩崎助教授は語る。では、誤嚥した飲食物を吐き出す咳反射は改善できるのだろうか。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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