【第27回】
半夏厚朴湯で食べる楽しみが戻る
誤嚥性肺炎(3)
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)をのんでいると、のみ込みの機能が正常域まで改善され、誤って肺の方に飲食物が入る危険が低下することが分かった。では、誤って肺の方に入ってしまった異物を吐き出す機能、つまり咳(せき)反射は改善できるのだろうか。
東北大先進漢方治療医学寄付講座(漢方内科)の岩崎鋼助教授は、脳の委縮や小さな梗塞(こうそく)が多発し、誤嚥(ごえん)性肺炎になったことがある患者に半夏厚朴湯を4週間のんでもらい、のまなかった人と比べてみた。クエン酸を溶かした水を蒸気にして吸ってもらい、どのくらいの濃度になったらせき込むかをみたのである。
ここでも、明らかに差が出た。半夏厚朴湯をのんでいた人は、4週間後かなり薄い濃度のクエン酸でもせき込むようになっていたが、のまなかった人たちは全く変化がなかった。つまり、半夏厚朴湯が、咳反射を改善したのである。
しかも、この試験の間に患者さんを喜ばせる出来事が起きた。実は、この患者さんたちはのみ込みの障害が大きく、口から食べ物をとることができなかった。そのため、半夏厚朴湯も栄養を摂取するために胃に開けた小さな穴から、入れていたのである。
ところが、こうした患者さん7人のうち3人が、半夏厚朴湯をのんだ結果、口から食べ物を食べられるようになったのである。食べられること、食べる楽しみを取り戻すことは、患者にとっても家族にとっても大きな励みになる。
「こうした結果からみても、半夏厚朴湯には誤嚥性肺炎を防ぐ効果があると思います。特に高齢の方で、明らかな脳卒中の発作がなくても、大脳基底核という部分に小さな梗塞(ラクナ梗塞)がたくさんあって嚥下障害が起きているような人によく効くのです」と岩崎助教授は語る。
今は、脳卒中後の嚥下障害に対して、リハビリ治療も行われている。こういう場合にも、半夏厚朴湯を併用して治療効果を高めてほしいと岩崎助教授は考えている。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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