【第34回】
便柔らかくしお通じつける大建中湯
手術後の腸閉塞(2)
おなかの手術後に起こる癒着性腸閉塞(へいそく)は、患者を苦しめるだけではなく、医師をも悩ませてきた。以前から、大建中湯(だいけんちゅうとう)が効くとは言われてきたが、どの程度の効果があるのだろうか。横浜市大医学部付属市民総合医療センターの杉山貢院長らがあらためてその効果を調べている。
対象としたのは、大学病院を中心に11の病院で、手術による癒着性腸閉塞と診断された患者さん52人だ。この人たちに西洋医学的な治療を行った上で大建中湯を併用してもらった。といっても、患者さんは腸閉塞で腸が詰まっているので、飲食物は禁止。「患者さんは腸液などを抜くために、鼻から腸に管を通しています。そこで、最初はぬるめのお湯に大建中湯を溶かし、この管を通して直接詰まった部位に注入した」そうだ。こうして5日間、大建中湯を投与して、患者さんの経過をみた。
すると、「患者さんの8割以上は2日以内にガスが出て、吐き気や腹痛も早く良くなった」そうだ。腸閉塞は、腸が詰まる病気なので「ガスが出ればしめたもの」と杉山院長。おならは腸が通り出した証拠なのである。「鼻から腸に通した管でパンパンになった腸の圧力を減らすだけでも、6〜7割はガスが出ます。しかし、大建中湯を併用すると、その効果が2割ぐらい高まることが分かったのです」。
5日の間に7割近い患者さんにお通じがついた。最初は下痢便だが「これは、大建中湯が便を軟らかくして出しやすくしたため」だそうだ。全体でみると、8割以上の人に効果ありという判定だった。
「漢方薬は慢性的な病気に使われることが多いのですが、今回、大建中湯は腸閉塞という救急の症状にも効果があることが分かりました」と杉山院長。大建中湯で腸の癒着がとれるわけではないが、腸が通れば腸閉塞は緩解(かんかい)する。何度も繰り返す場合は、おかしいと思ったら、食事をやめて大建中湯をのむ。それによって腸からの吸収を促進し、腸閉塞を未然に防ぐことも可能だそうだ。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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