【第44回】
ホルモン分泌助ける温経湯
月経不順(2)
温経湯(うんけいとう)は、漢方の古典にも月経不順や不妊を治すと記されている漢方薬。その作用を調べた大阪医大産婦人科の後山尚久助教授は「初めて出会った漢方薬が温経湯だったので、こんなにホルモンの値が変動するのかと衝撃を受けました」と語っている。
後山助教授によると「月経不順は、脳下垂体からホルモンが出ない場合と、ホルモンが出ても卵巣が反応しない場合と、大きく2つに分類できる」そうだ。もっとも、実際にはそう単純ではないらしい。月経には、脳と卵巣から分泌される各種のホルモンが連携して働いているからだ。
脳の視床下部から分泌されるホルモンの刺激で脳下垂体ホルモン(ゴナドトロピン)が分泌され、このホルモンが卵巣に働いて女性ホルモンを分泌させる。その結果、排卵が起こり、受精がなければ子宮内膜がはがれて月経が起こる。
西洋医学では、無月経でも卵巣の働きが残っていれば、脳を刺激して卵巣からの女性ホルモンの分泌を促す薬を使う。重症になるとそれも効果がないので、下垂体ホルモン、つまりゴナドトロピンを使って直接卵巣を刺激し、排卵を促すそうだ。「要するに排卵誘発剤で無理やり排卵を起こすわけで、副作用の危険もあるのです」と後山助教授。
ところが、温経湯の場合は、全く働き方が違っていた。無月経の人に温経湯をのんでもらい、血液中のゴナドトロピンの量を測定すると、1・5倍も増加していたそうだ。重症の無月経の人では、さらに増加の程度が大きかった。それも、ただ量を多くしていただけではないのである。後山助教授によるとゴナドトロピンはいつも同じ量が分泌されているのではないという。「血中のゴナドトロピンの量を測定すると、スパイク状に濃度が高くなっています。その繰り返しを信号として卵巣がとらえて、卵巣ホルモンが出始めるのです」。
温経湯は、このゴナドトロピンのスパイク分泌を強く、頻繁にしていた。つまり、信号を強化して卵巣ホルモンの分泌を促していたのである。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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