【第53回】
六君子湯が貯蓄能力高める
胃の不快症状(1)
胃のもたれや吐き気、痛み、食後の膨満感など、胃の不快感に悩んでいる人は多いはず。これまで、検査をして特に異常がなければ、こうした症状は慢性胃炎と診断されていた。ところが、大阪市立大医学部消化器内科の荒川哲男教授によると「実際に内視鏡で胃の状態をみたり、組織を検査しても、炎症がないケースがかなりあるのです。逆に炎症があっても無症状の人がかなりいます。つまり、こうした胃の症状は慢性胃炎とあまり関係ないことが分かってきたのです。こうした例は、現在は機能性ディスペプシア、あるいは機能性胃症と診断されます」という。
つまり、胃の働きが異常を起こしてさまざまな不快症状を訴えるのが、機能性ディスペプシアだ。ストレスと関係が深いといわれ、患者は若い人から中高年にまで及んでいる。命にかかわらないとはいえ、慢性的な不快感で生活の質を著しく低下させる病気だ。これに、六君子湯(りっくんしとう)が効くことが分かってきた。
機能性ディスペプシアにも3つのタイプがある。空腹時や夜間の胃の痛みを中心とするのが、かいよう症状型。胃の膨満感や吐き気が中心の運動不全型。そのいずれにも当てはまらないのが非特異型。うつ病や不安神経症など心の病気に起因する胃の症状も非特異型に含まれるそうだ。
かいよう症状型は、胃酸との関係が深いので、胃酸の分泌を抑える薬が効く。心の問題から起こる胃の不快症状は、抗うつ薬などが効くこともある。しかし、問題は機能性ディスペプシアの6〜7割を占める運動不全型だ。「運動不全型には、胃の運動を改善する薬が使われるのですが、半分ぐらいの人しかよくならないのです。なぜかというと、運動不全型にも胃の蠕動(ぜんどう)運動が低下して胃から腸への排出能力が悪くなっているタイプと胃に食物をためる貯留能力が低下しているタイプがあるのです。胃の運動を改善する薬では、胃の排出能力は良くなっても貯留能力は改善できません。こういう人には、効果的な薬がなかったのです」と荒川教授。
そこで、胃の貯留能力を高める薬を探した結果、たどりついたのが六君子湯だった。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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