【第62回】
体質合えば1つで複数効果
糖尿病のしびれ(2)
糖尿病による合併症の中でも、神経障害は一番頻度も高く、早期から表れる症状だ。愛知学院大健康科学科の佐藤祐造教授は、中でもしびれに牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が効くことを明らかにしている。
「1984年に糖尿病性神経障害でしびれを訴える患者80人に牛車腎気丸を投与した結果、66・2%に有効でした。10年後に全国で544人の患者を対象に調べた結果でも、67・3%。だいたい同じ結果が出ていますから、確かにしびれに効くのだと思います」と佐藤教授。
では、なぜ牛車腎気丸が糖尿病によるしびれに効果があるのだろうか。神経障害は、高血糖による代謝障害で神経細胞が障害されることと、糖尿病によって血管が障害され、神経細胞が血液不足に陥ることが大きな原因といわれている。血糖値が高いと、アルドース還元酵素という酵素の働きが活発になり、血中のブドウ糖からソルビトールという物質がどんどん作られる。これが神経細胞にたまって悪さをする。現在、神経障害の治療に使われている西洋薬(キネダック)も、アルドース還元酵素の働きを阻害してソルビトールをできにくくする。
そこで、牛車腎気丸を構成する生薬をみると「直接間接に神経の代謝を改善し、血行を良くすると予測できます」と佐藤教授。実際に、1989年には山梨医大が、ラットを使った動物実験で、牛車腎気丸がアルドース還元酵素の働きを抑えることを報告している。
さらに、牛車腎気丸が血管を広げ、皮膚温を高めることも報告された。つまり、血行が良くなって皮膚温が高くなったのである。加えて、牛車腎気丸には附子(ぶし)が含まれる。附子は、アコニチンを含み、痛みを抑える作用がある。
「こうした作用が総合的にしびれに効くのだと思います。西洋薬ならばいくつもの薬が必要なのに、証(漢方の体質)さえ合えば1つでいくつもの作用を持つのも牛車腎気丸の利点」と佐藤教授は語っている。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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