【第73回】
むやみに使うな葛根湯
風邪(1)
風邪の漢方薬といえば、あまりに有名なのが葛根湯(かっこんとう)だ。北海道漢方医学センター付属北大前クリニックの本間行彦院長によると、「葛根湯を出せば、だいたい半分ぐらいの人には効果があります。それで、昔から何にでも葛根湯を処方するヤブ医者のことを葛根湯医と呼んだ」のだそうだ。
ヤブ医者でも半分の人で効果を上げることができるのが、葛根湯というわけだ。しかし、だからといって、むやみに葛根湯を使うと、残り半分の人はしっぺ返しを食うことになる。本間院長によると、葛根湯は「普通以上の体力がある人の風邪の急性期に使って効果のある漢方薬」なのだそうだ。急性期というのは、風邪をひいてせいぜい4〜5日のこと。これ以上時間がたってから葛根湯をのんでも、効果は期待できないという。いつまでもダラダラのんでいてもダメなのである。
さらに、大事なのが体力。漢方では、体力のある人を実証、ない人を虚証、その中間の人(虚実間)と分けている。葛根湯が向くのは、首が太短くてガッチリした体形、赤ら顔で声も大きいといった漢方でいう実証の人から虚実間の人まで。実際には「高齢者で中間より上の体力の人はまずいない」のだそうだ。つまり、高齢者には葛根湯は向かないのである。
ところが、高齢者には漢方薬は体にやさしいからと葛根湯を好む人が多い。こういう人が葛根湯をのむと、「胃が荒れて痛み、ひどい目に遭いやすい」と本間院長。高齢者など体力がない人は、胃腸も弱いことが多い。葛根湯に含まれる麻黄が、胃を障害することがあるのだ。
これを漢方では「誤治」というのだそうだ。「漢方薬は、本来の使い方をすれば、西洋薬のような副作用はほとんどないに等しいといっていいと思います。しかし、証(漢方的な体質)を間違えたり、病気の進行期を間違えて使うと、いわゆる副作用的な症状が出てくるのです」と本間院長は語っている。
風邪といっても、実は数十種類の漢方薬が使い分けられるのである。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
|