【第78回】
副作用抑制に十全大補湯
抗がん剤の副作用(1)
いかに副作用を抑えて、がんを殺すか。これは抗がん剤治療に課された最大のテーマともいえる。最近その突破口として漢方薬が浮上してきた。現代医学的な研究から、漢方薬が優れた効果を上げることが分かってきたのだ。
星薬科大の杉山清教授が着目したのは、シスプラチンという抗がん剤だ。シスプラチンは白金を含む抗がん剤で、強力な効果を持ち、最もよく使われる抗がん剤のひとつになっている。しかし、副作用も強い。腎臓に対する毒性が強く、吐き気や嘔吐(おうと)が激しいこと、さらに骨髄毒性といって白血球や血小板などの減少が起こることが知られている。白血球が減少すれば、簡単に感染症にかかり、命にもかかわってくる。血小板が減少すれば、出血を起こしやすくなる。いずれにしても、程度がひどくなれば、治療を続けることは難しい。
こういう場合、原因が分かれば、それを目標に副作用を軽減する薬を開発することも可能だ。しかし、杉山教授によると、「いろいろな説はあるのですが、シスプラチンの副作用に関してははっきりした原因は分かっていない」という。つまり、西洋医学的にシスプラチンの副作用に対処することは難しいのが現状なのだ。そのため、現在は利尿剤などで尿と一緒に薬の排せつを促すといった対策がとられている。
ところが、漢方薬は病気の原因が分からなくても、患者の症状や状態から病気を治すことができるのが大きな強みだ。そこで、シスプラチンの副作用を漢方的に考えると、「尿量の減少など腎毒性によって起こる症状は、水(すい)の異常なので水の巡りを良くする利水剤、吐き気や嘔吐は気の障害なので気を補う補気剤や巡りを良くする利気剤が対応します。骨髄障害は血液の障害ですから補血剤や利血剤で対応できるはず」と杉山教授は考えたのである。
では、こうした作用を併せ持つ漢方薬は何か。そこで、出てきたのが十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)だった。これが、副作用の低下に優れた効果をみせるのである。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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