【第79回】
十全大補湯作用で腎臓障害防ぐ
抗がん剤の副作用(2)
シスプラチンは、現在、がん治療で最もよく使われる抗がん剤のひとつだ。その副作用を軽減するために、星薬科大の杉山清教授は、まず漢方の古典的な考え方に従って可能性のある漢方薬を選んだ。
が、ここから先は全く現代医学的に研究が進められた。漢方的な考え方に沿って、つまり「気・血・水」のバランスを整える漢方薬として候補に上った漢方薬は11種類あった。これを、がんを植えつけたネズミに実際にのませてみたのである。
シスプラチンをおなかに注入すると「抗がん剤は、これほど体に悪いのかと思うほど」ネズミは悲惨な状態になったという。ネズミは、人間と違って嘔吐(おうと)することはできない。しかし、毛並みは悪くなり、体重が減少してやせこけていった。
17日目には、腎臓の状態を示す血中尿素窒素の数値は4倍に増加し、尿量は半分近くに減少。白血球の数も血小板の数も、正常値の3割以下に激減していた。体重は7割を切り、摂取する餌の量もわずか3割に減った。
その結果、「がんも治りましたが、20日目あたりから次々にネズミが死んでいった」という。がんも殺すけれど、がんを持つ本人の命まで奪われるという結果だったのである。
では、ここに漢方薬を投与するとどうか。結論から言うと、最も効果が高かったのは、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)だった。
11種類の漢方薬をシスプラチンと併用してネズミにのませると、8種類の漢方薬で腎臓の障害を防ぐことができた。西洋医学では、腎臓の障害を防ぐことを目的に、利尿剤(フロセミド)を使っているが、漢方薬の効果は、この利尿剤とほぼ同じだった。中でも一番効果が高かったのが、十全大補湯だったのである。
白血球や血小板の減少など血液の障害は、ほとんどの漢方薬で抑えることができた。では、がんに対する効果はどうか。がんを殺す効果が低下したのでは何にもならないからだ。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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