【第83回】
組み合わせで効果異なる
抗がん剤の副作用(6)
シスプラチンによる腎臓の障害、白血球や血小板の減少などの副作用は、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)で、かなり抑えられることが動物実験で明らかになってきた。
研究を行った星薬科大の杉山清教授は「白血球や血小板の減少など骨髄障害は、抗がん剤に共通した副作用です。シスプラチンに限らず十全大補湯は抗がん剤の副作用予防に幅広く使えるのでは」と語っている。
さらに、今回の研究で新たな可能性も出てきた。シスプラチンを始め抗がん剤は、がん細胞も殺すが正常細胞も傷害する。それが副作用であり、そのために使える量も限られている。しかし、十全大補湯で副作用を軽減したらどうなのか。
杉山教授は、ネズミの実験で十全大補湯で副作用を抑えれば、シスプラチンの投与量をかなり増やせるという結果を得ている。副作用を抑えて投与量を増やすことができれば、それだけがんに対する治療効果を高めることも期待できるのである。
さらに、この研究から面白いことも分かってきた。十全大補湯には、10種の生薬が含まれるが、腎毒性を軽減するのは、リンゴ酸ナトリウムという成分だ。リンゴ酸ナトリウムは、当帰(とうき)に一番多く含まれているが、他の生薬にも結構たくさん含まれている。しかし、その量に見合うほどには、十全大補湯の効果は強くない。「熟地黄(じゅくじおう)という生薬にリンゴ酸ナトリウムの作用を抑制する働きがあったのです。十全大補湯では、当帰が主役で熟地黄がわき役、他の生薬は黒子の役割をしているのでしょう」と杉山教授は考えている。
また、同じ量の当帰を含む漢方薬でも、それぞれに腎毒性を抑える効果は異なることも分かった。つまり、生薬の組み合わせによって、同じ当帰でも作用の出方が違うのである。「実証(体力のある人)向きの漢方薬ほど、当帰の作用が抑えられていました」と杉山教授。これも、いずれ「漢方薬の組み合わせの妙」を解く鍵になるかもしれない。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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