【最終回】
「免疫細胞に働き」炎症治まる
アトピー性皮膚炎(下)
漢方薬は、アトピー性皮膚炎の治療に使われて、その効果も報告されている。だが、いったいどういう漢方薬がどんなアトピー性皮膚炎に効くのか。これを確かめるために、名古屋市立大大学院薬学研究科の能勢充彦先生らが、動物実験を行っている。
ある種の薬をネズミの耳に繰り返し塗ると、アトピー性皮膚炎とよく似た状態になる。このネズミに薬を塗布するのと同時に、アトピー性皮膚炎の治療によく使われる漢方薬8種をのませてみた。実際には、「人間と感受性が違うので、ヒトが服用する10倍量を飲み水に混ぜて与える」のだそうだ。
すると、一番はっきり効果が出たのが十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)だった。「薬を耳に塗ってただの水を飲んでいたネズミは、3週目ぐらいから耳の腫れがひどくなる一方なのです。ところが、十全大補湯をのんでいると、同じ薬を耳に塗っても塗るたびに腫れが出てまた元に戻るというリズムが残るのです」。様子を観察した7週間の間、十全大補湯をのんでいたネズミは、はるかに耳の腫れが少なかった。かきむしる行動も少なければ、皮膚の赤みや出血、かいよう、カサブタや皮膚の乾燥など、観察した項目はいずれも、十全大補湯グループがずっと少なかった。実際に、皮膚の炎症反応が抑えられていたそうだ。
「これは、実験に使ったモデルが十全大補湯の証だったのかもしれません。他の漢方薬も違うタイプの実験系ならば効果が出るのかも」と能勢先生は考えている。皮膚の炎症が抑えられたのは、炎症を抑える作用のためなのか、それとも免疫システムを変えるなど一種の体質改善効果なのかも気になるところ。これは現在検討中だが「免疫細胞に働いている可能性も大きい」と能勢先生。
今後は、作用の中心が何なのかを調べると同時に、実際に漢方薬で効果が上がった人にも協力してもらい、実験と両方から「どういう人にどんな漢方薬が効くのか」。つまり漢方の証を科学的に解明していく方針だ。そうなればより漢方薬も使いやすくなるはずだ。(終わり)
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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