【第10回】
ほとんど手術の必要なし
仮性包茎
「あのー手術したんですけど…まだ痛いんです」。神戸市立中央市民病院泌尿器科「思春期外来」の診察室。石川英二医師を前に、20歳の専門学校生K君は、うつむいたまま消え入るような声で言った。K君がぽつりぽつりと話したところによると、男性雑誌で包茎手術の記事を読み、コンビニでバイトをして80万円がたまったところで、1人で病院に行ったのだという。「最初は相談するつもりで行ったんですが、その場で周囲を囲まれ、断れない雰囲気に。でぇ、そのまま手術室に…残りの費用100万円はローンでいいって…」。
石川医師のもとには、ときどきK君のように無理やり包茎手術を受けさせられてしまった若者がひどく落ち込んで相談に来る。「コンプレックスをあおられ、脅されて手術をされたことで若者の受ける精神的なダメージは、計り知れません。それに手術後の傷の痛み、ローンを抱えたことを親に打ち明ける屈辱、切るだけじゃなくコラーゲンを入れて大きくしたりもされるのですが、手術をしたという罪悪感から精神的パニックになることもあります。」と石川医師は不当な手術への怒りを隠さない。
「僕は、包茎はほとんど手術の必要はないという立場を取っています。子どものころに母親が包皮をむくべきかどうかというのは泌尿器科医の間でも意見が分かれるのですが、仮性包茎について、手術の必要はないというのが、泌尿器科医のほぼ統一した見解です。どうしても包茎手術を受けたいと思うのなら、2人以上の医師にじっくり相談してから慎重に決めるべきです」。
03年夏に開設したこの泌尿器科思春期外来は、電話予約制で、石川医師が30分間、患者の話をじっくりと聞き、看護師も診察室には入らない。「包茎の手術を勧められた」「自分のペニスは異常に醜い気がする」「ペニスが短小ではないか」といった悩みを抱えた患者が来る。「多くは正しい知識の情報を提供することで解決しますが、自己評価の低い若者が多いのが気になります」と石川医師。今は若者も大人もインターネットなどの過激な性情報に惑わされコンプレックスを抱えていると指摘する。
「男親と息子は性の情報を交換できる関係にはないですね。親にできることは、正確な性知識の書いてある易しい医学書などをさり気なく息子の目につく所に置くことくらいかな」とアドバイスする。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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