【第39回】
1人で抱え込まず早めの相談を
性同一性障害(2)
静岡県立こども病院内分泌代謝科の加治正行医師のもとには、背が低いことを心配して多くの親子が訪れる。だが、病院で治療が可能なのは、成長ホルモンや甲状腺ホルモンの不足など病気が背後にある場合だけで、検査の結果、異常がなければ治療の方法はない。
「私は子どものころから自分が女性の体であることに違和感を感じていました。大きくなったらペニスがはえ、男の体になると信じていましたから。小学校5年生のとき、女子だけが集められ生理について説明を受けた時はショックでした」と話すのは、89年に米国で女性から男性への性別適合手術を受けた作家の虎井まさ衛氏だ。
虎井氏は今年9月に戸籍上の性も男性に変更し、性同一性障害者・研究者・支援者のためのミニコミ誌「FMT日本」を主宰、性同一性障害に悩む人々からの相談活動を行う。最近は、本人からの相談はもちろん、思春期のわが子から「性同一性障害かもしれない」と告白された親からの相談も増えている。
性同一性障害とは体が男性でも自分を女性と思う、逆に体が女性でも自分を男性と思う状態だ。自分の体の性と心が一致しないという生きづらさがある。日本精神神経学会が診断と治療ガイドラインを発表し、医療上の治療行為としてホルモン療法や性別適合手術を行える対象となっている。
スーツにネクタイ姿で、ひげそり跡もくっきりと分かる虎井氏は「私は制服のスカートに苦痛を感じ、風呂に入って自分の体をみるのも嫌、胸の膨らみも嫌で夏でもさらしを巻き、女性っぽい高い声で話すのが嫌で電話もとれなかった」と、体の性別に嫌悪感を感じていた思春期の心境を説明する。
性同一性障害は、その人が自分の性別をどう認識するかという、その人自身の問題だ。これに対し同性愛とは相手との関係性であり、志向の問題という点で異なっている。ただ現実には、この2つが重なるように見える部分もあるので、本人も自分は同性愛者なのか、性同一性障害なのか混乱している場合も少なくない。性同一性障害であるかどうかは、ガイドラインに基づいて、何回もカウンセリングを受ける過程で、はっきりしてくることが多い。
「思春期はただでさえ葛藤(かっとう)の多い時期です。自分の体の性に違和感を感じる性同一性障害を持つ人たちは、より複雑なストレスを感じる場合が多く、うつになったり自殺を考える若者も少なくない。でも仲間はいます。1人で抱え込まないで、悩んだら性の専門家や当事者のグループなどに早めに相談してください」と虎井氏はアドバイスする。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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