【第89回】
縦でも横でもない「ナナメ」
親子関係(2)
「友だちができても、本音を話して後で関係が悪くなると、いじめに遭うかもしれないから、できるだけ本当の気持ちは言わないようにしている。それがみんなとうまくやるコツかな。親は忙しそうだからあまり相談はしないかも」と話すのは中学2年生のT子だ。
「子どもたちの多くは集団の中で相互に不信感を抱きながら、それを押し殺して友だちごっこを演じている。周囲をモニターしながらそれに合わせるのは過酷なことです」と指摘するのは、岐阜大助教授で児童精神科医の高岡健氏だ。高岡医師は「殺し殺されることの彼方 少年犯罪ダイアローグ」(雲母書房)で、評論家の芹沢俊介氏と03、04年に起こった少年犯罪をテーマに対談をしている。
高岡医師は、少年犯罪の多くは個人の病理というより社会の状況の反映と見るべきで、どの家庭にもどの子どもにも起こり得る問題であると説明する。思春期は精神的、社会的、身体的に子どもから大人へ移行していく時期だ。この激動の時期に子どもたちを支えるのは「自分自身を大切に思う心」だが、その基礎となるのは乳幼児期に親から得る「ありのままの自分が温かく受け止められたという体験」だという。
95年に起きた阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件の衝撃、そしてその後も続く不況やリストラによって、大人たちは、自己防衛的になり、対人関係にも敏感になった。精神的に余裕のなくなった大人たちの影響を直接受けとめているのが、この間に育った思春期の子どもたちだ。「家族や自分に対し、肯定的な感情を持てない子どもが増加しています。こういった子どもが集まる集団の中では、少しの不信感がすぐに激しい敵意に変化します」。
と高岡医師。
この状況の解決策として高岡医師は「子どもたちが集団から逃げ出す自由を保証すること」「集団の中の子どもたちを外から支えること」を提案している。必要なのは、親子の縦型の関係でも学校の横並びの関係でもない「ナナメの関係」だという。「老人や親戚、地域の人などの大人の存在が大切です。一見社会の中であまり役に立たないように見える弱い人も共に生きているという実感が、子どもたちに必要なのです」。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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