【第117回】
将来は遺伝子治療で血管新生
慢性難治性疼痛治療の明日
慢性難治性疼痛(とうつう)に最後の切り札として行われている「脊髄(せきずい)刺激療法」。「2000年から保険適用になりました。慢性疼痛のみならず、不随意運動や末梢(まっしょう)動脈閉塞(へいそく)にも効果があります」と、埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)麻酔科の相田純久助教授(59)は言う。今、日本で脊髄刺激療法を最も多く行っている1人である。
「末梢動脈閉塞とは閉塞性動脈硬化症、糖尿病による動脈閉塞、バージャー病などの膠原(こうげん)病に伴う動脈炎などです」。閉塞性動脈硬化症は手足の血管が動脈硬化を起こし、血液の流れが悪くなる。手足の血管の狭心症、そして心筋梗塞(こうそく)と思えばよい。特に60代、70代の男性に多く、進行度合いによって1度から4度に分けられる。
1度 手や足が冷たくなり、しびれたりする。
2度 間歇性跛行(かんけつせいはこう)。ある程度の距離を歩くとふくらはぎなど脚が痛くて歩けず、しばらく休むとまた歩ける。500メートル、400メートルと歩く距離が短くなり、300メートルを切るようになると閉塞状態に近い。
3度 安静時にも痛む。
4度 太い動脈の血液循環がないので足に潰瘍(かいよう)ができたり壊疽(えそ)になってしまう。
「脚の切断と診断されてから私どもを受診される方が多いのです。それでも足首からの切断であれば、かかとの切断へと症状は改善できます。もう少し早いと、痛みはもちろん、脚の血液循環も改善でき、切断を免れます。血管拡張と側副血行路の発達に結びつくからです」。
閉塞性動脈硬化については「HGF遺伝子治療」が大阪大学医学部のほか全国約30カ所で臨床治験中。薬物療法、バルーン(風船)療法、バイパス手術などでは治らない状態に行われる。血管をつくるHGF遺伝子を下肢に注射することで血管を新生させる。「臨床試験も順調ですが、始まったばかりで、その副作用や合併症は未知の段階です。実際に保険適応となるにはまだ長い年月が必要でしょう。将来はHGF遺伝子治療が主流になるでしょうが、それまでは脊髄刺激療法がつなぎ役として重要だと思います」。
▼脊髄刺激療法 痛みの中継点である脊髄の周囲、硬膜外腔に皮膚から針を刺して刺激電極を入れる。そこから電気刺激を発生して痛み信号を伝わりにくくしてしまう。痛みの解放のみならず、原因疾患も改善するケースもある。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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