【第128回】
脳内メカニズム障害
うつ病(下)
誰もが風邪をひくように“心の風邪”といわれる「うつ病」は、誰にでも起こり得る病気で、決して特別なものではない。では、なぜ心が風邪をひくのか−。その原因が脳内のメカニズム障害にあることが分かってきた。
ひもろぎ心のクリニック(東京・豊島区)の渡部芳徳理事長(41)は次のように言う。「脳の中でその機能を正常に保っている物質の量が変化して起こるのです。つまり、脳の神経細胞の情報伝達がうまくいかないのです」。
人間の脳内には1000億個にも上る神経細胞があり、絶えず情報を伝達しあっている。より詳しく説明すると、神経伝達物質の受け渡しで行われている。セロトニンやノルアドレナリンがその中でも重要な働きをしている。
神経細胞と神経細胞の間にはシナプス(連結部)があって、そのシナプスに神経細胞からセロトニンが放出される。すると、次の神経細胞の受容体に結合し、情報は伝わっていく。「役目を終えたセロトニンは、元の神経細胞の末端に取り込まれ、再度シナプスに蓄えられます。セロトニンの80%が貯蔵されます」。
ところが、ストレスにさらされ続けると、セロトニンの不足が起こってくる。「慢性的なストレス過剰状態が続くと、ストレス物質のコルチゾールが増えます。このコルチゾールがシナプスにあるセロトニンなどの不足を引き起こし、うつ病になるのでは、と考えられています。が、科学的に証明されたものではありません」。
このような脳内メカニズム障害が分かってきたことで、新薬の開発に結びついているが、実際には、まだまだ分からないことが多いのである。
▼セロトニン セロトニンは中枢神経系のみならず、血小板、血清などに広く分布している生理活性物質。脳幹の中の「ほう線核」という部位で、アミノ酸の1種であるトリプトファンから作られる。人間の癒やしやリラックスにかかわっている。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
|