【第141回】
人工血管進歩で死亡率低下
胸部大動脈瘤(下)
極めて難しい大動脈瘤(りゅう)の手術。日本の医療施設での平均死亡率は10〜20%。その手術について、死亡率4%前後を維持している川崎幸病院(川崎市幸区)大動脈センターの山本晋センター長(45)は次のように言う。
「胸部、腹部、どちらに大動脈瘤ができた場合でも、瘤のできた部分の大動脈を人工血管と置き換える置換手術を行います」。さらりと言うが、並大抵の手術ではない。
「私は胸部大動脈瘤の手術に、超低体温を用いています。血流を冷却し、体温を20度まで下げて手術を行っています。この方法であれば、脳に血液を流さなくてもすむ循環停止法をとることができるのです」。この手術を成功に導いているのは、医師の腕ととともに前述の人工血管の進歩だ。
置換手術に用いる人工血管は100年にわたり、ガラスを利用したり、プラスチックを利用したりと、さまざまな研究が行われ、今日のダクロンに到達した。化学繊維の布で編んだもので外側はタンパク質でコーティングされているため血液の漏れ度合いは少なくなっている。
「化学繊維の布は藤棚の棚で、そこに血栓がついてさまざまな細胞が棚の外側、タンパク質でコーティングされた内側に組織をつくるのです。タンパク質のコーティングが2週間くらいで溶けますが、そのときに内側に、それに代わる組織ができあがっており、もともとの血管のように働くのです」。
手術は胸部大動脈瘤で約6時間、腹部大動脈瘤で約1時間30分。「手術が長くなると、患者さんの体により大きな負担をかけてしまいます」。確実でスピーディーな手術が大動脈外科医にはより強く求められているのである。
▼大動脈瘤の治療 大動脈瘤の治療には<1>手術<2>オープンステント<3>ステントの3つの方法が行われている。中心はやはり手術。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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