【第162回】
くも膜下再出血防止にはクリップ
脳卒中の手術療法
突然に襲いかかってくる脳卒中には血管が詰まる「脳梗塞(こうそく)」と、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」がある。今回は脳出血とくも膜下出血の治療に焦点をあてる。
脳出血と診断がつくと、その出血量、出血の場所、意識障害の有無など患者の状況を総合的に考えて、薬物療法か血腫除去術かが選択される。薬物療法では止血薬、降圧薬、抗脳浮腫薬が使われ、血腫除去術としては開頭血腫除去術、定位的血腫吸引術がある。
血腫除去術は血腫による2次的損傷を最小限に食い止めるものであり、開頭血腫除去術は全身麻酔をして開頭し、血腫を取り除く。一方、定位的血腫吸引術は開頭しないで頭蓋(ずがい)骨に小さな孔(あな)を開け、そこから吸引管を挿入して血腫を吸いとる。身体にやさしい手術とあって、最近では内視鏡を使った術式も登場し、より進展しつつある。
出血タイプのもう1つ、脳動脈瘤(りゅう)が破裂するくも膜下出血は、脳卒中の中で最も怖く、突然死に結びつく。その状況を、東京逓信病院(東京・千代田区)脳神経外科の野口信副院長(53)は、次のように言う。
「救急車で運び込まれた方の33%は社会復帰できるまでに回復されます。次の33%の方々は身体に障害を残しての日常生活に。残りの33%の方々は寝たきりか死亡というのが今日の状況です」。
その怖いくも膜下出血の治療は−。「くも膜下出血は出血後に頭蓋内圧が上昇したり、血液の凝固作用にもよって出血が止まります。しかし、再破裂を起こすと、さらに死亡率が高くなります。だから、なるべく早期にクリッピング手術を行います」。
つまり、くも膜下出血の治療は再破裂の予防なのである。クリッピング手術は脳動脈瘤のある部分の頭蓋骨を切開し、出血を起こした動脈瘤の根元をチタン製のクリップでクリッピングする方法である。
最近は血管内治療の「コイル塞栓術」も行われるようになってきたが、それでも85%がクリッピング手術というのが日本の現状である。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
|