【第164回】
深部の瘤治療可能
脳動脈瘤のコイル塞栓術(下)
脳動脈瘤(りゅう)が破裂するとくも膜下出血。「何時何分に起きたと特定できる激しい頭痛」が起こる。この脳動脈瘤治療には、今、開頭して行うクリッピング術と、血管内治療のコイル塞栓(そくせん)術がある。現時点では、日本では85対15でクリッピングが断然多く行われている。
これは、どちらの治療が良いかの評価にはならない。何といっても日本でのコイル塞栓術は歴史も8年程度と短い。だから、コイル塞栓術を行う医師自体が少ないからだ。
では、信頼できる比較研究を紹介しよう。02年11月、最も権威あるイギリスの医学雑誌「ランセット」に発表されたものだ。「ISATの発表で、どちらの治療でも可能と判断された患者グループにおいて、1年後の要介助または死亡の割合がクリッピング術30・8%に対してコイル塞栓術は23・5%にとどまり、科学的にコイル塞栓術の優位性が証明されたのです」と、神戸市立中央市民病院(神戸市中央区)脳神経外科、脳卒中センターの坂井信幸部長(49)は言う。
これらを踏まえて、コイル塞栓術の長所と短所は以下のようになる。
《長所》
○クリッピングに勝る成績が大規模試験で示されている。
○入院期間が短く体にやさしいので、未破裂のケースではすぐに元通りの活動に戻れる。
○脳の深部の脳動脈瘤の治療も可能。
○高齢者や体力的にクリッピングが受けられない人にも治療可能。
○頭髪をそらなくて良い。
《短所》
○長期成績がまだ出ていない。
○医師や施設が少ない。
○術中に脳動脈瘤が破裂したときの対応はクリッピング術が勝る。
○動脈瘤の形によってはクリッピング術でなければ対応できないものがある。
脳動脈瘤を治療する施設では、いずれの治療法も可能で、客観的に両者を選択して患者が治療を受けることができる日が早くきてほしいものである。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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