【第171回】
流産の数%に重症患者
睡眠時無呼吸症候群(下)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因には「閉塞性睡眠時無呼吸」「中枢性睡眠時無呼吸」「混合性睡眠時無呼吸」の3種類があり、その多くは閉塞性睡眠時無呼吸である。
その原因は「口蓋垂の肥大」「口蓋扁桃」「下顎の形態異常」など数多いが、最も多いのが「肥満」。その点から、SASは生活習慣病ともいえる。
当然、肥満の女性も多く女性のSAS患者のケースでは事故以外に「流産」にも関与していることを愛知医科大学病院(愛知県長久手町)睡眠医療センターの塩見利明教授(51)が報告し、注目を集めている。『妊娠中のSASによる低酸素血症が胎児に及ぼす悪影響』である。塩見教授はいう。「重度のSASの肥満女性が妊娠すると、本人が低酸素血症に陥るだけではなく、胎児にも酸素が充分に行き亘らないので胎児も低酸素血症になります。胎児ではそれが脳に障害を起こしたり、流産に結びつくのです」
SASの低酸素状態を軽く思っている人が多いが、重症のケースになると、8000メートル級の山の頂上にいるのと同程度の厳しい状態になっているのである。
事実、それまで流産を繰り返していた女性が、SASの治療を行いながら妊娠すると、元気な赤ちゃんを抱くことができたのである。「SASの治療とは肥満を改善するダイエットとCPAP(シーパップ)療法を行うのです。昼寝をするときにも、夜寝るときにも鼻マスク式持続陽圧呼吸装置(CPAP)を使ってもらい、無呼吸状態をなくし、充分な睡眠をしてもらったのです。それが胎児をも低酸素血症から守ることができたのです」
流産の数%には重症SASによるケースがあると思われる。女性の重症SAS患者で流産経験のある人は、充分にこのことを認識してほしいし、多くの産婦人科医にも認識してほしいものである。
▼CPAP療法 CPAP(シーパップ)とは鼻マスク式の器機で、重症のSAS患者の無呼吸状態を改善するために用いるのがCPAP療法。この装置は空気の通り道の上気道がふさがらないよう患者に合った圧力で空気を送り、強制的に上気道を広げる。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
|