【第173回】
脳に電極埋め込む
パーキンソン病(下)
中脳の黒質にある神経細胞の変性によって起こるパーキンソン病、今日ではパーキンソン病で亡くなることはなくなってきた。「寝たきりになる方も、骨折、重症の肺炎といったアクシデント的な事故がない限り、あまりありません。パーキンソン病は死や寝たきりに結びつくといった考え方は無用になりました」と、順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京・文京区)脳神経内科の水野美邦教授(64)は言う。
これは、パーキンソン病の治療が進歩したからだ。治療は、まずは薬物療法。対症療法だが有効性は高い。最初に使われるのが「ドーパミン・アゴニスト(ドーパミン受容体刺激薬)」。ドーパミンの代わりをする薬。1〜2年使って十分に症状がとれない、もしくは副作用で薬がのめないときは「L−ドーパ(ドーパミン補充薬)」を使う。
「薬物療法の中心となるのはL−ドーパです。ただ、L−ドーパは4〜5年服用すると、自分の意思とは無関係に手足が動く不随意運動が40〜50%の人に出てきます。それを先延ばしにするためにドーパミン・アゴニストを先に使うのです」。
つまり、ドーパミン・アゴニストで治療し、L−ドーパを上乗せするのが今日の薬物療法の標準。この2つで症状が十分とれないときは、抗コリン薬、塩酸アマンタジン、塩酸セレギリンなどが補助的に使われる。「不随意運動が出てつらいという患者さんには、手術療法の深部脳刺激療法が注目されています」。
脳の深いところにある視床下核に電極を埋め込み、皮下を配線させて胸部皮下に発信器を埋め込む。この発信器から電気信号が送られ、刺激し続ける。効果が長く続くとあって期待されている。
また、震えだけが良くならないという患者には、前々からある手術療法の「定位脳手術」が行われている。
▼定位脳手術 頭頂部の頭蓋(ずがい)骨に小さな穴を開け、そこから電気針を視床下核または淡蒼球(たんそうきゅう)に刺して一部を破壊する方法。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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