【最終回】
体外受精で年間1万3000人誕生
不妊症(下)
不妊治療の最先端は、やはり体外受精、顕微授精。今日までの体外受精での累計出生児数は8万5000人を超え、今では年間1万3000人以上誕生している。ここまで増えてきた体外受精は、夫婦の精子と卵子を採取することから始まる。通常、1回の排卵時に成熟する卵子は1個から数個。効率を考えて排卵誘発剤で複数の卵子を成熟させて採卵する。それを特殊培養液で成熟させ、培養器の中で(体外で)受精させて4〜8分割した時点で子宮内に戻す。あとは受精卵が確実に子宮に着床し、妊娠するのを待つ。
もちろん、残った受精卵は無駄にはしない。「凍結保存し、1回で妊娠しなかったときは、2回目からは凍結保存しておいた受精卵を使うのです」と、西川婦人科内科クリニック(大阪市中央区)の西川潔名誉院長は言う。日本の不妊治療のリーダーの1人として「不妊治療の基本は、不妊の原因を調べてそれを治して自然妊娠することです。そして、体外受精も1つの選択肢と考えて私のクリニックでは行っています」と。
世の中の風潮として体に傷をつけることなく赤ちゃんを抱きたい、と体外受精に走る母親予備軍は多い。その体外受精の究極の方法として行われているのが「顕微授精」。「顕微鏡下で受精させるものです。精子が少ない場合や受精障害のあるときに行われます。採取した精子の中から良好精子1個を髪の毛の先ほどの細いガラス管で卵子1個に注入、培養器の中で培養し、受精の結果を待ちます。受精に成功すると子宮に戻します」。
まさにミクロの仕事。受精卵を孵化(ふか)しやすくするめに「アシステッド・ハッチング」や「胚盤胞移植」も行われている。「胚盤胞移植は受精後通常3日で注入する受精卵を、5〜6日まで培養して子宮に戻す技術です。着床率が良く、また、多胎予防というメリットがあります」。だが、体外受精の費用が年間平均約45万円と高い。それを少子化を食い止める一助とすべく04年から国と都道府県が治療費の一部「年間10万円を限度に通算2年間支給」を負担している。
不妊原因が男性にあるときや、精子と子宮頸管粘液が適合せず自然妊娠が不可能なときには、精子を人工的に注入して妊娠させる。これが人工授精で、配偶者間人工授精と非配偶者間人工授精の2つの方法があり、非配偶者間人工授精は登録施設の二十数カ所で行われている。(おわり)
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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