【第23回】
身体によりやさしいオフ・ポンプ
狭心症・心筋梗塞外科(下)
虚血性心疾患の狭心症、心筋梗塞(こうそく)の外科手術として一般的によく知られている冠状動脈バイパス手術(CABG)は、まさしくバイパスをつくる手術。3年くらい前までは人工心肺を使った手術が主流だった。それが今日では、心臓を動かしたままで手術を行う心拍動下バイパス手術(オフ・ポンプ)が主流となっている。
「オフ・ポンプの場合、動いている心臓を部分的にスタビライザーという器具でおさえてはいますが、それでも当然動いています。この状況で直径2ミリ程度の細い血管を縫うのは相当に慣れていないとできません。また持って生まれた才能というか、身体的能力がないとできません。できる外科医、できない外科医がはっきりと分かれるのです。丁寧にやればいいとか、論文を読んで勉強すればいいとかいう次元の話ではないのです」と、バイパス手術でよく知られている大和成和病院(神奈川県大和市)心臓病センターの南淵明宏センター長(46)は、その難しさを話す。
それでも今、主流になりつつあるのは、人工心肺による人体への悪影響があるからだ。「脳梗塞をすでに起こしている患者さんや、肝臓病やがんなどを併せ持つ患者さん、80歳以上と高齢の患者さんなど。こういったケースではオフ・ポンプが断然有利です」。医師には難しい手術だが、受ける患者にとってはまさしく“身体によりやさしい手術”なのである。
では、すべてオフ・ポンプになるのか−。「人工心肺を使ったバイパス手術の方が適しているケースもあります」。それは次の3つの場合だ。<1>狭窄(きょうさく)、閉そく部分が1、2カ所ではなく、4、5カ所などと多い<2>心臓のパワーに余裕がない<3>心臓の弁に逆流などの機能不全がある。
「オフ・ポンプで行えば、かえって危ないケースもあります。それぞれの患者さんでどちらが適しているか、いつも悩みながら安全で効果的な方を選択しています」。どちらかの方法が公平に判断されるためには、両方のオプションを持っている心臓外科医に決めてもらう必要がある。
▼回旋枝 心臓の筋肉に血液を送る冠状動脈は、右冠状動脈、左前下行枝、回旋枝の3本。回旋枝は心臓の背面側の筋肉へ中心的に血液を送っている。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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