【第35回】
センチネルリンパ節生検で切除部分判断
腹腔鏡下手術(胃がん)(上)
胃がんの治療には内視鏡を口から胃に入れてがん病巣を取ってしまう「内視鏡的粘膜切除術」がある。早期のがんを対象とする。その次の治療段階は、開腹手術との中間に位置する「腹腔鏡下手術」となる。腹腔鏡下手術でリードしてきたのが慶応大学病院(東京・新宿区)である。
日本で最初の腹腔鏡下手術は、90年5月、帝京大学溝口病院外科の山川達郎教授(当時)グループが胆のう摘出で行った。慶大病院一般消化器外科では北島政樹教授のもと大上正裕医師(故人)が2カ月遅れで行い、92年3月、ついに胃がんでの腹腔鏡下手術を最初に成功させた。「患者さんの身体に負担の少ない手術だからこそチャレンジするのです」と、大上医師が熱く語ったことを思い出す。この腹腔鏡下手術は「大上式」と名付けられて治療は行われている。
同病院では腹腔鏡下手術の一部をロボット化したり、遠隔医療化するなど、さまざまなチャレンジを続けている。同病院の北川雄光講師(44=外来は土曜の午後)は、その伝統を受け継ぐ1人。食道・胃がんを専門としている。
抗生物質の効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染が社会問題化した91年には「PCR法・MRSA感染症迅速診断法」を完成させたことでも有名。現在は、胃がんの切除部分をより小さくするための「センチネルリンパ節生検」に、98年から取り組んでいる。センチネルとは「見張り」という意味。がんの転移は、まずはリンパ節に。そのリンパ節転移の最初のリンパ節をセンチネルリンパ節という。
「センチネルリンパ節に転移の有無を見て、どこまで切除するかの判断にするやり方です。センチネルに転移がなければ、それ以上の転移はないと考え、あとのリンパ節の郭清(かくせい)は必要なくなります」(北川講師)。
より患者に優しい“縮小手術”を可能にするのである。
▼リンパ節の郭清 リンパ節は外部からの細菌などの侵入を免疫的に働いて防ぐ。そのリンパ節を残さずに切除することをいう。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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