【第4回】
光線力学的治療で86・4%治癒
肺がん(上)
がんの外科手術の面では日本の医療は世界をリードする。今、日本のがん死亡者数で年間5万6405人でトップの肺がんも同じ。その肺がんの診療で国際的に高い評価を受けているのが東京医科大学病院(東京・新宿区)第1外科。伝統的に肺がんが有名で、その伝統を受け継ぎ、発展させているのが『国際肺癌学会』、世界の会長であった加藤治文教授(62)である。
肺がんの年間手術数は約180例で、標準術式による5年生存率は手術時の肺がんの進行別に次の通りである。TA期84・4%、TB期63・9%、UA期48・6%、UB期40・6%、VA期28・8%、VB期20・1%、W期9・6%。目を見張る成績である。
加藤教授は手術の確実さで定評があるだけではなく、早期の肺がん患者に対して、身体に負担の少ないレーザーを使って切らずに治す『光線力学的治療(PDT)』を、世界で最初に行って成功した。1980年のことである。
「肺がんは胃がんや大腸がんと異なり、発症年齢が高いのです。高齢者の場合、手術は大きな負担をかけるので、心臓など他の臓器に障害が出るケースもあります。PDTはその負担が非常に軽くすみます」(加藤教授)。
PDTは局所麻酔を行って口から気管支鏡を挿入して、がんの発症場所の発見、治療を行う。もちろん、その前段階として光感受性物質(フォトフィリン)の注射が必要である。「光に感受性があり、がんに集まりやすいフォトフィリンを48時間前に静脈注射し、気管支鏡で肺をのぞき肺がん部分を特定した上で、レーザーを照射します。すると、活性酸素が生じてがん細胞が破壊されるのです」。
今日では第2世代のレザフィリンとなり、検査・治療の4時間前の投与となり、さらに進化。すでに25年の身体にやさしい治療とあって、肺がんのみならず、食道がんや子宮がんなどでも用いられる。
かつて「PDTだけで治癒率を80%には高めたい」と話していた加藤教授。現在、PDTのみでの治癒率は86・4%と、予想をはるかに上回る成績となった。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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