【第40回】
拡大手術後は生活の質変えることも
胃がん手術(下)
胃がんは今日、早期で発見されるケースが70%と多くなり、治るがんとなった。それだけに、進行がんのより良い治療(手術)が求められている。進行胃がんに対しては標準胃切除術から拡大手術まで行われている。「術前から予定して行う拡大手術は、当然、治癒を目指しています。予定では拡大手術ではないものの、手術中に転移(例えば大動脈周囲リンパ節転移)が見つかって、大動脈周囲まで郭清(かくせい=切除)することもあります」。スキルス胃がんの手術で定評のある市立堺病院(大阪府堺市)の古河洋院長(57)は拡大手術についてこう話した。
最近の治療では、最もEBM(科学的根拠に基づく医療)が重視されている。が、標準手術でのD2郭清のように、大動脈周囲のリンパ節郭清を日常的にするべきか否かについては、まだ、そのエビデンス(科学的根拠)は得られていない。「科学的根拠を示すべく、比較試験をもう10年行っています。あと3年間見ないと結果は出ません。現時点で予想するのは難しいですが、私は大動脈周囲のリンパ節郭清を行った方が、多少ではあっても成績は良くなるのではないかと思っています」。
一方、このような拡大手術をすると、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)に大きな違いが出ることがある。「根治を目指した大動脈周囲のリンパ節郭清をしますと、下痢が続くとか、輸血を必要とする確率が高くなったりします。手術をその手前までにすると、そのようなQOLの悪化を引き起こしません」。だが、手前で手術を終えてしまうと「見えないがんの取り残し」の危険性が大いに考えられる。
手術以外の治療法として「化学療法」があり、手術後に行う場合は「術後補助化学療法」。これについて日本胃癌学会のガイドラインには「現在まで確実な延命効果を証明したエビデンスは乏しい」と記されている。QOLを考えた手術とともに、今、(術後)化学療法において積極的な臨床試験を行ってエビデンスを作りあげようとする動きがある。
▼拡大手術 リンパ節を広く郭清する拡大手術のほか、胃のみならず周辺臓器を広く切除するのも拡大手術である。予定手術として、最大は胃、横行結腸、脾臓(ひぞう)、左副腎、胆のう、膵臓(すいぞう)の体・尾部を切除する。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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