【第65回】
延命効果「パッチ療法」
肝臓がん
今日では、都道府県にほぼ1カ所ずつ、がんを専門とする病院ができている。東の国立がんセンターに匹敵するのが西の大阪府立成人病センター(大阪市東成区)。その消化器外科。肝臓がんの治療・研究の第一線で活躍しているのが佐々木洋部長(55)である。
日本のトップを競う成績を知って、患者は引きも切らずに訪れる。外科、内科合わせて毎月平均20人弱の新しい肝臓がん患者が入院。内訳は肝細胞がん患者13人、胆管細胞がん患者3人、転移性肝がん患者3人、肝門部胆管がん患者1人。このうち肝切除ができるのは約40%。一般の病院では20%程度なので、技量の高さが分かる。
手術後の5年生存率は肝細胞がんが65%、胆管細胞がんが38%。
肝切除以外にも治療方法は数多い。それは、佐々木部長自身が治療法を開発しているからでもある。「『サンドイッチ療法』と『ラップ療法』などを開発しました」。
佐々木部長が挙げた「サンドイッチ療法」とは、肝がんへの酸素と栄養の道を断って、がんを兵糧攻めにする肝動脈塞栓(そくせん)療法の改良方法。「がん病巣の血管の出入り口をふさぎ、がん病巣血管内に抗がん剤がとどまっているようにしたのです。がん病巣内の抗がん剤の濃度は、がん以外の組織内の濃度に比べて3倍以上になっています」。
酸素、栄養の道を断たれたがん細胞は、新生血管を誘導する。この状態が起きないようにシリコン製の膜で肝臓をラップ。現在では肝がんの表面だけにシリコン製の膜を張る「パッチ療法」が主になっている。ラップ、あるいはパッチでほかからの栄養血管を断った後、肝動脈塞栓あるいは肝動脈に抗がん剤を注入する。以降、6年の延命に結びついた患者もいる。
「どうしたら患者さんを救えるか。また、延命になるかを常に考えています。それが開発に結びつきました。そして、最初の患者さんが54カ月と長生きしてくださいました。患者さんに感謝です」。
さらに、開発は続く。
▼肝動脈塞栓療法 酸素と栄養の血管・肝動脈をふさいでがん細胞への補給を断つ。すると、がん細胞は死滅してしまう。肝切除ができない、また、再発した肝がんへの開腹しない治療法。1週間程度の短期入院で済む。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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