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本紙記者コラム「見た・聞いた・思った」
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2004/12/10付紙面より 過去のコラム一覧へ

「感動」どう売る孫社長

野球部 飯島智則記者

 スポーツを見て感動したことがありますか? 最近、感動していますか?

 5日にダイエー・ホークスを買収するソフトバンクのヒアリングが行われた。質疑応答を終えたソフトバンク孫社長は、スライドを映し出した。同社のビジョンや企業戦略を説明するものだった。

 スライドには「プロフェッショナルスポーツとは? 心の底からの感動が必須」「感動から収益へ」などと書かれていた。ファンが感動することにより、テレビを見る(広告、看板収入)、球場へ行く(チケット、飲食収入)、応援する(グッズ収入)に結び付くと主張していた。

 感動を商売にする。結局はそういうことだが、あらためて言われると妙に印象に残ってしまった。自分の「感動」を思い起こしてみた。…。結構ハードルが低いのか、いろいろと思い浮かぶ。米国へ移動する飛行機の中、暇のため何気なくアニメ「ファインディング・ニモ」を見ていたら、涙が止まらなくなって客室乗務員にお絞りをもらったし。

 最近では4日に行われたサッカー、新潟とジーコジャパンドリームチームの一戦だった。仕事をしながらチラチラとテレビを見ていたら、次第に画面へのめり込んでいった。4年ぶりに代表のユニホームを着た神戸FWカズ(37)から目が離せなくなった。

 W杯へも、五輪へもつながる試合ではない。新潟地震復興支援チャリティー試合。被災で傷ついた人々が望んでいたのは、ただボールをうまく扱えるという技術ではないだろう。仕事ではなく、サッカー選手としての、人間としての「生きざま」を見せようとしている。一視聴者として、そう感じた。

 結局ゴールはならなかったが、カズはチーム最多3本のシュートを放つなど再三にわたりスタンドを沸かせた。Jリーグ創生期をリードした男。2度も目前で夢のW杯出場を逃した男。そして、人々を勇気づける力を持つ男。彼のプレーに「感動」した。

 ヤンキース松井秀喜外野手(30)が放った忘れられない本塁打がある。昨年10月30日、ニューヨークで報道陣が草野球をしていたら松井が飛び入り参加してきた。5日前までワールドシリーズで4番を打っていた大リーガーも、ゴム製の軟式球と素人投手のヒョロ球に戸惑い、ポップフライを連発していた。打ち損じても笑っていた。ただのお遊びだった。

 しかし、回が進むにつれ周辺で遊んでいた少年たちが「あれ、マツイだぞ!」(英語)と言いながら集まってきた。たちまち大観衆となった。同点の8回表2死満塁。作り話のようだが、松井は左中間を抜く本塁打(フェンスはない)を放った。ホームへかえると帽子を高く掲げ、ヤンキースタジアムと同じカーテンコールをしてみせた。「観客」たちは大喜びだった。ワールドシリーズの本塁打を見た直後だったのに、相手投手は素人なのに、とてつもなく「感動」してしまった。

 まあ、人それぞれだが、こういう感情は不意にわき起こるため、とてもコントロールはできない。孫ソフトバンクは、どんな感動で収益を得るのか。楽しみにしている。嫌みではなく。

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   column@nikkansports.co.jp
飯島智則(いいじま・とものり)
 野球部。横浜市出身。93年に入社し青森支局で東北のスポーツ全般を取材。プロ野球は巨人、横浜を担当。03年からメジャーを中心に取材。35歳。
飯島記者の写真

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