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本紙記者コラム「見た・聞いた・思った」
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2005/01/09付紙面より 過去のコラム一覧へ

武の責任感G1・10勝

レース部 高木一成記者

 年明けのスポーツニュースの楽しみの1つに、各分野のスターが、今年はどんな目標を掲げているかを知ることがある。6日付東京本社版1面に載った巨人清原選手の盗塁宣言は驚いた。今年はレギュラーも危ないんだろうなと思っていたが、こういった弱点を克服しようという姿勢を見せられると余計に応援したくなる。で、分野を競馬に向けて見ると、もっと驚く宣言があった。

 武豊騎手の「今年はG1を10勝します」の言葉だ。中央競馬のG1は年間21レースある。これに地方交流G1、海外G1を入れても「10勝」は、本当に厳しいノルマだ。過去の中央競馬の年間G1最多記録は5勝。勝ちまくっているように見える武豊騎手でも中央競馬だけでは年間4勝が最高(4度記録)で、地方交流G1を3勝した02年の合計7勝が精いっぱいの記録だ。

 「10勝したい」ではなく「10勝します」という断定形の書き方はよほどの覚悟がないとできないはず。本人の公式ホームページ(HP)の1日のコラム、新年あいさつで見たのだが、05年にかける本気度が伝わってきた。

 ここ2年連続して、長らく不可能と言われていた年間200勝超えを達成した。毎年ダントツでリーディングを獲得しているが、さらに上のレベルを目指そうという姿勢は、他の分野の超一流選手と比べても共通する点。以前も書いたが、現在の中央競馬は、外国人騎手や地方騎手の活躍が増えている。いくら高収入があるとはいえ、中央の騎手はもっと危機感を持っていいと思っている。そんな中でも、安泰でいいはずの武豊騎手が全然気を抜かないのだから、なかなか他との差は詰まらないと感じさせられた。

 また、この宣言にはもうひとつ意味があるように思う。ファンに、より競馬への興味を持ってもらいたいという願いだ。今はまだ分からないが、もし年末の有馬記念に宣言通りのG1・10勝がかかったとしたら、世間の注目を集める1つの大きな「売り」になる。

 目標に向かって黙々と仕事をこなす「不言実行」は1つの美徳だと思う。だが、各界のトップを走る人が自分の目標、考えなどを積極的に世間にアピールすることは、ファンの関心を呼び込む。「目標に具体的な数字をあげるのは好きではない」という武豊騎手が、あえて「有言実行」のプレッシャーを自分にかけたのは、競馬が盛り上げる話題が少しでも増えるようにと考えたのではないか。

 新聞の記事量やテレビへの露出など、野球やサッカーに比べて競馬の騎手の意見、考えが世間に伝わることは圧倒的に少ない。近年、中央・地方にかかわらず競馬の売り上げ減、ファン離れが深刻になっているが、それは何も開催者側だけの問題ではない。ほかの騎手もHPなどを通して、もっと自分の考えをアピールする機会を増やしてもいいように思う。今回の武豊騎手の「G1・10勝宣言」には、個人としてもっと上を目指すという向上心と、トップジョッキーとして競馬界全体を考えている責任感が感じられた。

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◆高木一成(たかぎ・かずあき)
  97年入社。レース部中央競馬担当、販売局、再びレース部。現在、中央競馬担当。東京出身、31歳。
高木記者の写真

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