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2005/01/26付紙面より
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「これぞプロ」の言葉
スポーツ部 永井孝昌記者
仕事の都合で、ある空港の、ピアノのあるしゃれたカフェでこの原稿を書いている。似合わない場所にいるもんだから、たった5行書いただけで女性が奏でるビリー・ジョエルの「Just The Way You Are」に眠りそうになっている。
でも、眠くなるオレは正しい。この場所では、そこにある、ということを必要以上に感じさせない心地いい演奏こそプロの技。「コーヒーください」という大声が店中に響いても、立派なソファに腰を沈めながらムード無視してパソコンたたく男にも動じずに自己主張なく淡々とけん盤に指をはわせるなんて、なかなかやれることじゃない。
プロといえば、本紙昨年2月掲載のインタビュー中でも紹介されたこの話。落語家の桂歌丸師匠が以前、腹膜炎を患って集中治療室に入った。「何かほしいものある?」。たずねる奥方に歌丸師匠、こう言った。「カ、カネ」。「私のこと誰だか分かる?」。顔をのぞき込む娘に歌丸師匠、ちょっと目を開けて答えた。「…ブタ」。たとえ病床にいようとも、落語家を貫くこの姿勢。プロの奥深さと笑いの神髄を見たようで、激しく心揺さぶられた。
生涯かけてリングに上がり続けた故ジャイアント馬場も、これぞプロ、という逸話を残している。いわく「ここがどこの体育館かは、天井を見れば分かる」。地方の体育館を巡業し、暗いリングの上でイヤというほど何度も受け身を取ったからこその重み。玄関より控室より、背中に伝わるリングの冷たさと痛みが思い浮かぶ選手の悲哀と説得力。ジャイアント馬場、という偉大な選手は、相手の技を受けることも美学、という信念を、経験者でしか発し得ない極上の一言で美しく表現してみせた。
そういう言葉に出会った瞬間、この仕事に喜びを感じる。毎日流血してるブッチャーの「オレの額はいつでもグチュグチュだぜ」という言葉。想像を超えるプロ根性に、感動で失神しそうになった。こだわりと哲学を持ち、体現し、それを伝える言葉を持つプロを、心から尊敬する。
一方で「頑張る」「勝ちたい」「貢献したい」と本音と個性ひた隠しの言葉をおく面もなく並べるプロもいる。「もっとプロらしいこと言え」みたいなこと、言うつもりはない。ただ、世の中にはたったひとつの失敗で店のムードぶち壊しという重圧の中で「もっと耳を傾けて」という本音押し殺して日々ピアノに向かうプロもいる。語る場所があって知りたいファンがいて、それでも本音を語らないことが格好いい、と思うなら、格好つけたふりほど格好悪いものはないことも知った上でやってほしい、とは思う。「Just The Way You Are」。飾ること、ないのに。
と書いておいて、こんな文章でそれでもプロか、と言われるとお恥ずかしい限り。せめてどこにもスキのない原稿にはしたつもりだが、歌丸師匠と腹膜炎、と書かなければあやうく、マが抜けた原稿にもなっていた。
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永井孝昌(ながい・たかまさ)
新潟県加茂市出身。93年入社。北関東支局勤務を経て、97年からスポーツ部でサッカー担当。5年間のプロレス担当の後、03年11月からサッカー担当に復帰。34歳。
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