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本紙記者コラム「見た・聞いた・思った」
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2005/02/11付紙面より 過去のコラム一覧へ

吉永、黒木の「映画愛」

文化社会部 松田秀彦記者

 吉永小百合(59)と黒木瞳(44)。日本映画界を代表する女優の主演映画が、好成績を収めている。くしくも同じ1月15日に公開されたが、吉永主演「北の零年」の観客動員数は200万人、黒木主演「東京タワー」も100万人を突破するヒットを記録中だ。ここ数年、日本映画の人気が上昇気流に乗っているとはいえ、両作品のヒットは、2人の女優の「映画愛」と無縁ではない。

 吉永は、自分の出演作を自分の「子供」のように愛している。

 「私には子供はいませんので、死んじゃって何が残るかと言えば、それは自分が出た映画なんです。かわいいと言ったら変な言い方になりますが、そういう意味では、どの作品も精いっぱいの愛情を注いで取り組んでいるつもりです」。撮影を終えても、キャンペーンに精力的に取り組む。「北の零年」は「大人の男女が見に行けるような映画を作り続けたい。そのために絶対にこの映画を認めてもらいたい」と、かつてないほど全国を駆け回った。公開後も何度も劇場に足を運んで、観客と一緒に映画を見る。育てた子供が、社会でどう受け止められているか、心配する母親の姿でもある。

 黒木は、宝塚を退団後、1年間ほど女優活動とは縁がなかった。「女優デビューは映画」とこだわったからだ。

 芸能界に進んだのは、福岡で学生時代に「風と共に去りぬ」を見て、あこがれたから。「スクリーンに入りたい」。その思いを強く持ち続け、実現した。吉永と違って、ドラマ出演も多いが「時間がゆっくりと流れる映画の撮影現場が好き。自分には合っていると思います」という。86年の映画「化身」で女優デビューしたが、80年代、90年代前半は、日本映画は“斜陽”と言われていた。それでもコンスタントに映画出演を続けた。理由を聞けば「映画女優になりたかったから、こだわりたい」と言うが、映画関係者の間では「ありがたい存在」だった。

 「東京タワー」は「大人の女性の恋愛映画も十分に魅力的に成立することを見せたかった」と意欲的に臨んだ。

 今でこそ、若い観客層をターゲットにした日本映画が次々とヒットし、駆け出しの女性タレントたちに夢を聞くと「映画に出たい」と言うようになった。つい7〜8年前までは、めったにそんな言葉を聞くことができなかった。吉永も「きつい、きたない、苦しいの3Kですもの、仕方がないですよ(笑い)」と話していたほどだ。

 「北の零年」には中高年の男女が足を運び「東京タワー」は幅広い年齢層の女性が客席を埋めている。劇場関係者に、観客の感想を聞くと、2人の女優の演技への評価や、あこがれの声が、圧倒的に多いという。

 日本映画の人気復活は、劇場など環境の整備、宮崎駿監督作品などのアニメ人気、テレビドラマの不振など、いろいろな要因が取りざたされている。

 だが、斜陽といわれた低迷時代にも、映画に愛情を注ぎ続け、こだわり続けた2人の女優の姿勢が原動力の1つになっているのも間違いない。

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   column@nikkansports.co.jp
松田秀彦(まつだ・ひでひこ)
 文化社会部。94年入社。編集局写真部を経て96年春から文化社会部。映画、音楽を中心に取材。東京都生まれ、千葉県育ち。35歳。
松田記者の写真

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