ダンスV!北村宏初G1/ヴィクトリアM
<ヴィクトリアマイル>◇14日=東京◇G1◇芝1600メートル◇4歳上・牝馬◇出走18頭
ダンスインザムード(牝5、藤沢和)が、初代マイル女王に輝いた。1番枠から内をロスなく回り、直線は馬群を割って鮮やかに抜け出した。04年桜花賞以来の勝利でG1・2勝目を挙げた。手綱を取った北村宏司騎手(25=藤沢和)はデビュー8年目でうれしいG1初制覇。2着にはエアメサイアが入り、1番人気のラインクラフトは折り合いを欠いて9着に敗れた。
残り200メートル地点。北村宏の前にビクトリーロードが開いた。最内コスモマーベラスとマイネサマンサとの間。1頭分のスペースに、すかさずダンスインザムードを導く。渾身(こんしん)の力で右ステッキを振り下ろし、手綱を押した。エアメサイアの強襲も目に入らない。ゴールだけを見て追いまくった。「馬の状態が良かった。いいスタートを切ることができたし、折り合いを1番に気をつけた。最後は抜け出すタイミングひとつでした」。小さなガッツポーズ。歓喜よりもファンの多い馬を勝利に導いた安堵(あんど)感が表情に表れた。
北村宏は18歳で競馬学校を卒業。首席の生徒に与えられるアイルランド大使特別賞を受賞した。そして名門・藤沢和厩舎へ。G1勝利までの8年は、平たんな道のりではなかった。厩舎の主戦は岡部幸雄元騎手や、ペリエ、デザーモら外国人騎手が務めた。なかなかチャンスは巡ってこない。我慢の日々だった。だが、調教ではゼンノロブロイの追い切りなども任され、超一流馬の背中を感じながら技を磨いた。藤沢和師の「無言の愛情」。G1馬に教えられることは多い。昨年の秋から手綱を託されたダンスインザムードもそう。癖は誰よりも知っている。「去年からチャンスをもらったのに、ボクの腕で勝ち切れなかった。今日はなんとしても勝たせたかった」。背水の陣で臨んだ。
幼いころ、競馬は決して身近ではなかった。大工だった父が自宅近くに乗馬用の馬場と厩舎を造成。これが「騎手・北村」のきっかけとなった。中学入学後はサッカー部に所属。早朝は馬に乗り、サッカー部の朝練を経て、授業を受ける。「将来を決める時、馬に乗る仕事を考えた。競争する社会も魅力だし、頑張りしだいで上にも行ける」。馬とのコミュニケーション法は少年期につくられた。
今後は6月4日東京の安田記念(G1、芝1600メートル)を目標に調整される。牡馬相手でも勝つ力はある。「自厩舎の馬でG1を勝ちたい」。目標が現実になった。完ぺきな騎乗に、ヒーローの笑顔がひと際輝いた。【高橋悟史】
[2006/5/15/08:43 紙面から]
写真=ヴィクトリアマイルでG1初制覇の北村騎手はダンスインザムードの鼻をなでねぎらう(撮影・下田雄一)
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