|
|

マスコミ業界を志望した当時、紙面研究や読書の大切さを周囲から指摘された。
しかし、記者は予想のつかない動きをなす人や組織を相手にする職業。当然文章力を養うには、良い記事を参考にすることも必要だが、常に人の気持ちを理解する姿勢も大切だと思う。
|
|
|
朝9時30分。
川崎市のジャイアンツ球場に両足太ももの故障でリハビリ中の清原が姿を現わす。数十人のマスコミ関係者が質問を投げかけようと清原の車に群がるが、調整遅れから表情は固い。わずかな時間で貴重なコメントをものにするため、各社の記者が緊張した面持ちになる瞬間だ。
原監督からは昨年オフに早々と開幕4番の座を指名された。指揮官の意気に応えようにも、足の回復は遅れ気味。ストレスが絶頂に達しているビックスターが相手だけに、記者の質問も必然的に慎重になる。
ジャイアンツ球場に向かう電車では頭をひねって、質問内容を吟味する。「故障の回復具合は。開幕までの練習スケジュールは。オープン戦出場時期は…」。質問によって予想される清原のコメントを想定。それを紙面にどう反映させるか、整理部がつける見出しも考えてみる。しかし、用意した質問も、その日の練習内容や関係者証言などで一変する。臨機応変に対処する柔軟さも必要だ。
取材対象と信頼関係を築くことも重要だ。得てしてスター選手であるほどマスコミへの警戒心も強い。しかし、選手の本音を引き出さない限り真実は見えてこない。いかに清原という人間像を鮮明な形で読者に伝えるか。相手の気持ちをくみ取った丁寧な取材と紙面は、必ず対象者にも伝わる。苦境に立たされた男が、記者の目を見て笑ってくれた時の顔は忘れられない。心底この仕事をやって良かったと感じるひとときだ。
|
■プロフィール
97年入社後、編集局整理部配属。3年半後の00年に野球部移動。2年間西武担当を経験し、02年オフから巨人担当。
|
|