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データでみる日本代表「解析料理」

(2005年6月5日付紙面から) バックナンバー一覧へ

攻撃に厚み増した1トップ2レシーバー

日本の布陣
バーレーン布陣

<W杯アジア最終予選:日本1−0バーレーン>◇6月3日◇バーレーン・マナマ 国立競技場

小野故障も「ケガの功名」ミドルを生かす▼→▲

 ジーコジャパンが輝きを取り戻した。ぶっつけ本番となった1トップ柳沢、2レシーバー中村、小笠原という攻撃布陣が機能した。サッカー解析システムopta(オプタ)によると、前回バーレーン戦(3月30日)ではあまり見られなかったバイタルエリアを使った攻撃が目立った。2トップで停滞していた攻撃は、なぜ1トップでよみがえったのか。小野不在で、まさにケガの功名となった一戦をデータから読み解いた。

三角形を逆に

 同じ轍(てつ)は踏まない−。ジーコジャパンが前回同様、バーレーンを1−0で下した。ただし、その形、狙いはまったく違う。前線のシステムは、通常の2トップ&トップ下をひっくり返した1トップ2レシーバーという三角形。2列目からの飛び出しが勝利へのカギだった。

■前回■ 強いフィジカルを備える鈴木、高原を前線に並べ、トップ下に中村、その後方から中田が押し上げる。両アウトサイドは右に加地、左に三都主。FWのポストプレーを前線の起点とし、サイド攻撃を仕掛けた。センタリング28本。放ったシュート14本も、結局の得点はオウンゴールによるものだった。

■今回■ 機動力に優れる柳沢を1トップに、FWの受け皿として小笠原、中村を並べた。中田が後方から中盤を仕切り、右の加地、左の三都主が積極的に絡むことで、攻撃に厚みを持たせた。センタリング17本。放ったシュートは11本。変化のついたパスワークから小笠原の1点が飛び出している。

前半34分 小笠原のゴール

 最終予選2度のバーレーン戦を「シュートまでの軌跡」から比較した。すると、攻撃における狙いの違いは明らかだった。今回(図1)は右サイドを「磁場」とした。つまり中田、中村、加地がここを起点としてボール保持することで、相手選手を引きつける。バーレーン4バックの左イサを前へ出すことでギャップをつくり、前方の柳沢、小笠原が判断良く空いたスペースを突いていく。シュートはバイタルエリアを強く意識したもので、ミドルシュートを主としていた。

意図はっきり

 まさに前回(図2)の教訓を生かした、徹底した攻撃スタイルだった。一貫して三都主を切り札としたサイド攻撃にこだわるあまり、常にシュートはプライマリーエリアで屈強なDFとの「ガチンコ勝負」となった。相手CBは身長193センチモハメド、183センチジュマを筆頭とした人間山脈。サイドから大きく弧を描くクロスボールへの制空権争いで鈴木、高原がそう簡単に勝てるはずもない。57・5%と圧倒的優位にボール支配こそするが、結果的に攻め手を欠いていた。だからこそ、日本の特長であるパスワークを生かさない手はない。相手鼻先で変化をつけることで、屈強な連中と競り合うことなくゴールを狙えるのだから。

図2 前回 シュートまでの軌跡
図1 今回 シュートまでの軌跡

 ジーコジャパンの戦術と言えば、ポゼッションサッカーに変わりはない。ただし、どこでボールを回し、どこへボールを入れ、どうシュートを打たせるのか。この明確なコンセンサス(共通理解)は、最多67本のパスで攻撃をリードした中田ら強烈な主張者の下で徹底されていた。攻撃エリア(ピッチを3分割した最前方)におけるパス本数は前回の105→今回131。「手数がかかり過ぎて遅い」と言われた速攻率も、前回34・2%→今回46・6%。状況の機微に触れた緩急のついた攻撃が目立った。

 狙い通りの2列目からのゴール。殊勲者・小笠原の陰で黒子となった柳沢、中村の質の高いプレーもあった。前回の教訓を生かせる融通さ、そして大きな経験値。「和洋折衷」となったジーコジャパンは、何とも抜け目ない。【佐藤隆志】

 ◆日本対バーレーンVTR 序盤からアウエーの日本がボールを支配。前半34分、素早いパスワークからMF小笠原が先制ゴールを奪った。対するバーレーンは44分、FWユスフが豪快なロングシュートを放つが、右ポストをたたいた。後半、日本は受け身になる時間帯こそあったが、安定した攻守でスキを与えない。終盤バーレーンの足が止まったこともあり、慌てることなく1−0で逃げ切った。ボール支配率は日本53・1%。試合時間94分。

図3 先発メンバーの平均プレー位置

相手の右サイド封じた中沢

 やはり中沢は強かった。腰痛からの復帰戦ながら、相変わらず安定した守りを見せた。クリア最多16を数えるなど、日本の壁となった。左CBながら平均プレー位置(図3)は、宮本より低い21・92メートル。右CB田中より8・57メートルも下がっていた。これは相手が得意とする右サイドの攻撃に対応したもので、中沢の対応の良さを示している。同サイド三都主の位置も右の加地より低く、左で奪って右から攻撃、というチームとしての姿勢がうかがえた。

 また、日本は前線から最終ラインまで37・78メートルに絞ってコンパクトな距離を保つなど、徹底したプレッシングで相手攻撃を未然に防いでいる。被シュート全11本のうち8本(占有率73%)が25メートルを超えるロングシュートだったことからも、バーレーンは完全に攻め手を欠いていた。アウエーながら日本の完勝劇だった。


◆日本代表メンバーのバーレーン戦スタッツ◆

選手名 出場
時間
プレー
機会

セーブ
被枠
内S
パス シュート
阻止率
枠内S
阻止率
フィード その他
総数 成功 総数 成功
GK 川口 能活 94 38 0 2 11 2 26 10 100% 100% 9 3 0 0 0

選手名 出場
時間
プレー
機会

アシ
スト
シュ
ート
ラスト
パス
パス クロス スルーパス ドリブル 守 備
総数 成功 総数 成功 総数 成功 総数 成功

宮本 恒靖 94 19 0 0 0 0 12 11 1 0 0 0 0 0 0 7 0
田中 誠 94 44 0 0 0 1 28 22 0 0 0 0 0 0 1 14 0
中沢 佑二 94 43 0 0 0 0 26 20 0 0 0 0 0 0 1 16 1

三都主アレサンドロ 94 79 0 0 0 10 61 44 6 0 0 0 5 2 4 10 1
小笠原満男 90 67 1 0 4 6 53 42 4 0 1 1 2 1 1 1 2
福西 崇史 94 62 0 0 0 1 52 49 0 0 1 1 2 2 1 6 1
中田 英寿 94 84 0 0 4 0 67 59 0 0 2 0 2 0 2 3 2
加地 亮 94 68 0 0 0 1 57 48 3 0 1 0 2 1 1 3 0
中村 俊輔 78 65 0 1 1 1 54 47 3 0 1 0 4 2 2 1 1
中田 浩二 15 18 0 0 0 4 16 15 0 0 0 0 0 0 0 2 0
稲本 潤一 3 5 0 0 1 1 4 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0

柳沢 淳 92 50 0 0 1 2 35 30 0 0 0 0 2 1 0 0 0
玉田 圭司 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

日  本 652 1 1 11 11 496 404 17 0 6 2 19 9 13 69 8
バーレーン 525 0 0 11 7 397 284 14 1 4 2 22 13 9 45 4
【注】出場時間はロスタイムを含む正味のもの。ラストパス=シュートにつながったパス。 B=ブロック、C=クリア、I=インターセプト。 セーブ=枠内シュートを防いだ数。チーム合計はプレー選手不明分も含む

◇opta(オプタ) Jリーグやプレミアリーグの公認するプレー分析データ。ただし、今回使用したデータ(シュート数等)は公式記録とは一致しない。出場時間はロスタイムを含めた正味の時間を採用している。

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