|
(2005年6月10日付紙面から)
|
 |
「鈴木先発」ジーコ監督頭脳作戦?
<W杯アジア最終予選:日本2−0北朝鮮>◇6月10日◇タイ・バンコク スパチャラサイ国立競技場
大黒投入で試合が面白くなった
ジーコジャパンらしいアクションサッカーで北朝鮮を破り、W杯出場をつかんだ。サッカー解析システムopta(オプタ)によると、大黒投入とともに後半から攻撃がスピードアップ、前半4本しかなかったシュートが後半11本へと倍増した。動き出しの速い柳沢、大黒を生かしたダイレクトプレーがさえ、久々にFWによる2ゴールが飛び出した。前半と後半で何が変わったのか。北朝鮮戦のデータから、興奮冷めやらぬ「バンコクの歓喜」を読み解いた。
相手に脅威
これもジーコ監督の頭脳作戦だったのか。前半と後半で、日本代表はまったく異なる攻撃スタイルを取った。鈴木→大黒へ、たった1人のFWを入れ替えたにすぎない。ただし、どちらが相手に脅威を与えたかは一目瞭然(りょうぜん)だった。ならば最初から大黒を使えば、という意見もあるだろう。だが、前半を鈴木で戦い、後半に大黒を投入したからこそ、よりダイレクトプレーが生きたと言える。前後半での異なる戦い方を検証する。
■前半■ 鈴木のポストプレーを起点とし、従来のポゼッションスタイルで試合を進めている。ボールを保持することで人数をかけてチャンスをうかがっているのだが、60%近い支配率に反して効果的なシュートシーンはまったく見られなかった(図1)。押し込めば、その分、前方のスペースを消してしまう。縦を突けず、相手選手をいなす横パスが増えた分、手数がかかっている。攻撃の速攻率35%。前回の北朝鮮戦37・5%よりも低かった。
■後半■ 2トップを組んだ柳沢、大黒はスピードある動きの質が持ち味。つまり守りから攻撃へ入れ替わったとともに、前線を意識した自陣から長いパスも入っている(図2)。いい意味で中盤を省略できる上、縮んだ陣形を縦に一気に引き伸ばし、後方から2次攻撃につなげるスペースをつくり出せる。もちろん手薄となった相手ゴールを一気に脅かせるという利点もある。巧みなポジショニングでボールを引き出す2トップにより、攻撃はスピードアップ。速攻率は48・5%に跳ね上がった。2得点の場面も、狙い通り速い展開からゴールを陥れている。
攻守が一体
ただ、すべて速攻がいいという早計なものではない。前半はまずセーフティーな戦い方が定石だ。W杯切符がかかる試合ならなおさら、まずはゲームを落ち着かせたい。さらに前半は心身フレッシュな両者によるつぶし合いとなるのは、想像に難くないところ。だからこそ前線から守備ができ、肉弾戦に強い鈴木を使うことで相手を消耗させ、後半にスピードのある大黒で勝負というゲームプランがあったはず。ましてや蒸し暑いバンコクでの戦い。現役時代、過酷さではアジアの比でない南米予選を戦ったジーコ監督なら、最善の術は知っている。
加えて0−0で後半開始という展開も、大黒向きだった。勝つしかW杯への望みがない北朝鮮は、いやがおうにも前へ出るしかない。相手が肉を切らせて骨を断つ覚悟なら、日本はより高い位置でボールを奪い、手数をかけず前方へ広がるスペースへ。まさに総意のダイレクトプレー。終了間際、DF田中が前へ出て奪い、すぐさま大黒へつなげたプレー(プレーイラスト)は攻守が一体となった象徴的なゴールだった。
特別なストライカーはいない。だからこそ、前半のポゼッション→後半のダイレクトプレー。展開に応じてFWを使い分ける、日本らしい戦術が生かされての快勝だった。また、大黒は単なるラッキーボーイでないことも証明した。柳の下にいつもドジョウはいない? いや、柳(沢)の下に大黒はいた。【佐藤隆志】
◆日本対北朝鮮VTR 序盤から日本が相手陣内に押し込むものの、思うようにシュートに結びつかない。停滞ムードを打破すべく、後半開始からFW鈴木に代えて大黒を投入。後半7、17分と柳沢が速攻からシュートへつなげるなど得点ムードが高まる。そして28分、大黒が落としたボールを柳沢がスライディングシュートし、均衡を破った。終了間際にも田中のパスから大黒が抜け出し、ダメ押しのゴール。集中した攻守で北朝鮮につけ入るスキを与えず、日本が完勝した。ボール支配率57・5%。試合時間92分。
高い位置で“奪取”
○…ダイレクトプレーを生かす下地として、高い位置でのボール奪取があった。ボールゲイン位置を見ると、前回より1つ前(図3)でのボール奪取率が最高値(37%)を記録。より前で守ることで、攻撃の第1歩とした。これは強烈なミドルシュートを武器とする相手を考えても得策だった。また、陰の立役者として予選全11試合に出場した宮本の貢献も見逃せない。平均プレー数は03年57・2→04年49・4→05年40・4と年々減少。自らボールに絡むより、周囲の戦況観察に重きを置いていることの表れだが、この危険察知力がピンチを未然に防いでいた。
| ◆日本代表メンバーの北朝鮮戦スタッツ◆ |
位
置 |
選手名 |
出場
時間 |
プレー
機会 |
失
点 |
セーブ |
被
S |
被枠
内S |
パス |
シュート
阻止率 |
枠内S
阻止率 |
フィード |
その他 |
| 総数 |
成功 |
総数 |
成功 |
B |
C |
I |
| GK |
川口 能活 |
92 |
31 |
0 |
1 |
6 |
1 |
26 |
21 |
100% |
100% |
4 |
4 |
0 |
0 |
0 |
位
置 |
選手名 |
出場
時間 |
プレー
機会 |
得
点 |
アシ
スト |
シュ
ート |
ラスト
パス |
パス |
クロス |
スルーパス |
ドリブル |
守 備 |
| 総数 |
成功 |
総数 |
成功 |
総数 |
成功 |
総数 |
成功 |
B |
C |
I |
D
F |
宮本 恒靖 |
92 |
49 |
0 |
0 |
0 |
0 |
42 |
35 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
7 |
1 |
| 田中 誠 |
92 |
64 |
0 |
1 |
0 |
1 |
55 |
45 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
8 |
1 |
| 中沢 佑二 |
92 |
44 |
0 |
0 |
0 |
1 |
30 |
27 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
11 |
1 |
M
F |
中田 浩二 |
92 |
69 |
0 |
0 |
1 |
0 |
54 |
42 |
4 |
1 |
0 |
0 |
1 |
0 |
3 |
6 |
0 |
| 加地 亮 |
92 |
73 |
0 |
0 |
1 |
1 |
62 |
51 |
4 |
1 |
1 |
1 |
2 |
2 |
1 |
3 |
1 |
| 福西 崇史 |
92 |
67 |
0 |
0 |
0 |
0 |
59 |
49 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
1 |
0 |
3 |
0 |
| 稲本 潤一 |
92 |
65 |
0 |
0 |
3 |
1 |
51 |
44 |
1 |
1 |
0 |
0 |
1 |
0 |
3 |
3 |
1 |
| 小笠原満男 |
92 |
77 |
0 |
0 |
1 |
6 |
66 |
52 |
8 |
2 |
1 |
0 |
1 |
1 |
2 |
0 |
0 |
| 遠藤 保仁 |
7 |
5 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4 |
4 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
F
W |
柳沢 淳 |
85 |
50 |
1 |
0 |
5 |
2 |
37 |
29 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
2 |
0 |
1 |
0 |
| 鈴木 隆行 |
46 |
24 |
0 |
0 |
0 |
2 |
16 |
12 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
| 大黒 将志 |
46 |
13 |
1 |
0 |
4 |
0 |
8 |
7 |
0 |
0 |
0 |
0 |
3 |
3 |
0 |
0 |
0 |
合
計 |
日 本 |
… |
640 |
2 |
1 |
15 |
14 |
516 |
421 |
18 |
6 |
2 |
1 |
11 |
9 |
9 |
45 |
5 |
| 北朝鮮 |
… |
450 |
0 |
0 |
11 |
4 |
349 |
243 |
10 |
1 |
1 |
1 |
4 |
4 |
12 |
45 |
2 |
| 【注】出場時間はロスタイムを含む正味のもの。ラストパス=シュートにつながったパス。
B=ブロック、C=クリア、I=インターセプト。 セーブ=枠内シュートを防いだ数。チーム合計はプレー選手不明分も含む |
|
◇opta(オプタ) Jリーグやプレミアリーグの公認するプレー分析データ。ただし、今回使用したデータ(シュート数等)は公式記録とは一致しない。出場時間はロスタイムを含めた正味の時間を採用している。
|