ジーコ監督、柳沢無理やり招集
サッカー日本代表のジーコ監督(50)が、20日のナイジェリア戦(国立)に欧州組5人を強行選出した。同監督は11日、同戦の代表23人を発表。所属クラブが招集に難色を示していたFW柳沢敦(26=サンプドリア)MF中村俊輔(25=レジーナ)をはじめ、MF中田英寿(26=パルマ)稲本潤一(23=フルハム)FW高原直泰(24=ハンブルガーSV)の欧州組が名を連ねた。来年2月スタートが濃厚な06年W杯ドイツ大会アジア予選に向けてベストメンバーで1試合でも多く経験を積みたい同監督の強い要望が、欧州クラブの意向を押し切った。
メンバー表が配られると会見場にどよめきが起こった。ナイジェリア戦への欧州組の招集を希望していたジーコ監督だが、柳沢の所属するサンプドリアなどが難色を示していた。これまでなら、招集を見送るところ。ところが、配布された紙には、欧州組5人が名前がズラリと並んでいた。
20日は、欧州クラブにとって大切な時期。イングランドやドイツは開幕直後、イタリアは31日にセリエA開幕を控えている。特に、7月にサンプドリアに移籍したばかりの柳沢は、スタメン争いの正念場。チームにとっても、新戦力が離れるのは痛い。今回は国際Aマッチデーで基本的にクラブ側は拒否できないが、親善試合であり「招集を見送ってほしい」と理解を求めてきた。柳沢の代理人ペトリッカ氏も「レギュラー確保へ重要な時期で、配慮が必要」と話した。しかし、ジーコ監督は強硬だった。
「重要な時期なのは承知しているが、W杯予選が迫る代表にとっても同じ。クラブ、選手に多少犠牲を強いるが、1試合1試合が大切だ」と、強い口調で言い切った。これまで海外に移籍したばかりの選手の招集は、選手とクラブの立場を考慮して開幕後まで待っていた。しかし今回は、クラブより代表を優先。「選手は代表でプレーし、いいパフォーマンスをすることで海外から声がかかる。こちらが必要な時は出場してもらう。これは交換条件だ」。慣習さえも破った。
焦りともとれるジーコ監督の強行招集。その裏には06年W杯ドイツ大会アジア予選が、当初の来年9月開始から2月へ半年以上も早まる見通しとなったことがある。同監督は自らの経験から「W杯は本大会より予選を勝ち抜く方が難しい」と言い続けてきた。6月のコンフェデ杯で手応えをつかんだものの、目標の決勝トーナメント進出は逃したという危機感もある。
予選まで最大8試合が組まれる。それでも、同監督は「コンフェデ杯で得た感触を高めるには(8試合では)少ないぐらいだ」。もともと多くの選手を試すより、チームのベースを決めて磨いていくタイプ。W杯直前まで選手を入れ替えたトルシエ前監督のやり方に疑問を呈したこともある。予選からベストメンバーでという思いが、ジーコ監督を駆り立てている。
欧州予選は来秋以降に始まるため、欧州クラブはW杯予選と言っても実感がわかない。そんな温度差を、田嶋技術委員長が各クラブを訪問して事情を説明することで突破した。しかし、今回の一件で、国際Aマッチデーではない12月の東アジア選手権の欧州組招集が困難になることも必至。ジーコ監督も「予選前の大事な大会ということをクラブが分かってくれるかが、大きな問題だ」と話した。協力を得るために10月に欧州各クラブを行脚する予定だが、強硬な「ジーコ流」が今後の代表招集に影響する可能性もある。【飯田玄】
[2003/8/12/09:59 紙面から]
写真=20日のナイジェリア戦メンバー23人を発表するジーコ日本代表監督。欧州組の5人を強行選出した(撮影・たえ見朱実)
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