<コンフェデレーションズ杯:日本2−2ブラジル>◇1次リーグB組◇6日目◇22日◇ケルン
MF中村俊輔(27=レジーナ)の左足が王国に、いや世界に衝撃を与えた。決勝トーナメント進出をかけて臨んだブラジル戦の前半27分に、ワールドクラスの27メートル同点弾。1−2で迎えた後半43分にも、ポスト直撃のFKでFW大黒の同点弾を呼び込んだ。全得点に絡む活躍でドローに持ち込み、最優秀選手(MOM)を2戦連続で獲得。得失点差でブラジルにおよばず1次リーグ突破は逃したが「日本に中村あり」を鮮烈にアピールした。
世界を震撼(しんかん)させた一撃が「波」を止めた。前半27分。福西のパスを受けた中村に、あるイメージがわく。「枠の中へ思い切り強く蹴る」。半身の状態から、最初のトラップで正面に向き直る。強振した左足シュートは無回転。揺れながらドロップのかかったボールは、GKマルコスの左手をはじきゴールネットに突き刺さった。
直前までブラジルのゆっくりとしたボール回しに、退屈したスタンドではウエーブが起きていた。だがこの一撃でファンは総立ち。ウエーブは途切れた。変わって押し寄せたのは大歓声の波。大観衆の目を奪った男は「ボールが軽いから無回転っぽくなって揺れていた。ラッキーだね」と、こともなげに運も強調した。
今日で27歳になる男の、1日早い「祝砲」。だが、これだけでは終わらない。後半43分のFK。ゴールほぼ正面のFK地点に、カベとなったブラジルの6人がジリジリと寄る。これを押し戻す中田英、中田浩、鈴木。それでも屈強な体をいからせFK地点ににじり寄るカナリア軍団…。重なり合う青と黄色のカベを、ギリギリで越えた中村の弾道は、ゴール右へ曲線を描いた。ポスト直撃のボールを大黒がボレーでゲット。日本サッカー史上初の、ブラジル戦1試合2得点の快挙は、こうして生まれた。
中村のFKは1日にしてブラジル人の思考回路を変えた。試合前日の会見。パレイラ監督は「われわれはラッキー。ジーコがFKを蹴るわけではないからね」と冗談を飛ばし会場の笑いを誘った。そして一夜明けた試合後の会見。ブラジル人記者に「中村のFKはあなたの全盛期のFKに似ているのでは?」と質問されたジーコ監督は「彼らしいキック。でも見せたのは初めてじゃない。FKで何点も稼いでいるしチャンスをつくっている」と答えた。笑う者は誰もいなかった。
芸術的キックの裏には不断の努力がある。規定ではカベはFK地点から9・15メートル離れなければならない。だがセリエAではデルピエロやトッティなどビッグネームでなければ、審判は近づくカベを見逃すことがしばしば。だから練習ではカベの距離を6メートルに設定し何度も繰り返し磨いていた。
「ただ引くのではなく打ち合いもできた。それが新しい発見」と中村。1得点1アシストのロナウジーニョ、ロビーニョを退けてMOMにも2試合連続で選出された。昨年の結婚後は女性ファンからのファンレターやレトルト食品などの差し入れも激減。しかしそんなことは「予想の範囲内です。サッカーを見てくれればいい」と意に介さない。代表から落選し輝くことを許されなかった02年W杯。来年やっと立てる悲願の舞台で、極上の輝きを放てばそれでいい。【広重竜太郎】
[2005/6/24/09:23 紙面から]
写真=後半、自ら蹴ったFKの跳ね返りを大黒が決め、ガッツポーズで喜ぶ中村(撮影・栗山尚久)
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