野洲V!個性と技術で新風/高校サッカー
<高校サッカー:野洲2−1鹿児島実>◇9日◇国立◇決勝
「技術」で全国4122校の頂点に立った。野洲(滋賀)が、初の決勝で連覇を狙う鹿児島実(鹿児島)と対戦。1−1の延長後半7分、流れるようなパス回しから途中出場のFW滝川陽(3年)が3戦連発となる決勝弾を決めた。滋賀県勢で初、関西勢でも32年ぶりの栄冠を獲得。日体大レスリング部出身の山本佳司監督(42)が率いる技巧派集団が、フィジカル中心の高校サッカー界に、新風を吹き込んだ。
決勝点は、糸を引くロングパスから始まった。延長後半7分。DF田中の左足から約50メートルのパスがピッチを横断した。受け取ったMF乾が中央にドリブルで切り込む。DFを十分引きつけ、背後のMF平原にヒールパス。その後ろを追い越したMF中川が、平原からのパスをガラ空きの中央へ折り返し、FW滝川が右足で流し込んだ。鉄壁の守りを誇る鹿児島実守備陣を完全に崩しきった。華麗な「つなぎ」の魅力に、観衆3万1782人のどよめきは大拍手に変わった。
「技術」で頂点をつかんだ。連覇を狙う鹿児島実相手に前半23分に先制。後半34分に同点とされたが、延長でもかたくなにゴロパスをつないだ。相手の速い寄せをヒール、足の裏、ノールックパスの高等技術でかわし、国立をうならせた。
日本協会の川淵キャプテンは「パスのたびに笑いが出た。こんなにおもしろいサッカーをするチームが出てきてありがたい。東福岡以来かな」と感心した。日本代表MF本山らを擁して、97年度に3冠を達成した伝説的チームを引き合いに出した。決勝点のFW滝川は「高校サッカーを変えると大口をたたいたから。あれ(決勝点)ぐらいは練習で見慣れている」と平然と言った。
簡単には習得できない技術を地域密着と一貫教育で磨いてきた。山本監督は9年前には「野洲クラブ」を立ち上げた。97年に部員わずか16人の野洲に赴任。野洲市に本拠を置くジュニアユースの強豪セゾンFCに日参した。信頼関係を築き、この日もベンチに入った岩谷コーチとともに、中学年代から選手を育ててきた。当初は、静岡学園ら全国の強豪校に流出していた選手の受け皿に、野洲がなった。今年の3年は15人が同クラブ出身だ。Jの下部組織に似た育成を実行。日本協会の田嶋技術委員長は「新しい風を吹き込んでくれた。ユース育成に生かしたいぐらい」と感心した。
今のチームが揺らいだこともある。昨年6月、総体県予選でPK戦負け。選手同士がけんかして1週間、自主練習する選手が絶えた。「負け続けたけど、技術で負けてなかった。自分たちをもう一度信じてやってきた」と金本主将。そして、「どこにもマネできへん最高のサッカー」(滝川)を作り上げた。勝負にこだわるあまり、ロングボール主体で走り勝つ高校サッカー界の常識を覆す初優勝。野洲が美しいパスで、新時代の扉を開いた。【益田一弘】
[2006/1/10/09:21 紙面から]
写真=初優勝し喜びを爆発させる金本主将(中央)ら野洲の選手たち(撮影・野上伸悟)
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