
2004年12月10日更新
「ハラハラ」「ドキドキ」は日本の特権
スポーツ部デスク:荻島弘一
今、イタリアのトリノにいる。「最終予選の組み合わせが決まって、日本でもW杯ムードが盛り上がります」というと、イタリア紙ラ・スタンパのマルコ記者は「へえ、イタリアじゃ再来年になってからだよ」と答えた。「でも、来年の12月には組み合わせも決まるでしょ」というと、「まだまだ選手の目はW杯なんか見ていない。クラブのことで頭はいっぱい」だという。
欧州の強豪国の選手にとって、今大事なのはリーグ戦、さらに何よりも大きな欧州チャンピオンズリーグだ。すでに予選は行われているが、2年後のW杯は彼らにとってあまりにも遠い存在なのだ。
本大会に出場して当たり前のイタリアが、予選段階から浮き足立つことはない(苦戦しても、最後は出場を決めるし)。「うらやましい」と思う反面、「予選に一喜一憂できる日本は幸せかもしれない」とも思う。W杯本番はわずか1カ月で終わるけれど、予選は長〜く楽しめるのだから。
W杯は、予選を含めて2年以上も行われる。優勝を狙うチーム、出場を目指すチーム、予選での1勝に夢を描くチーム。多くの国が、自分たちのレベルでW杯を楽しみ、熱狂する。それぞれの国に、W杯がある。だから、W杯はすごい。すでに、FIFA加盟に加盟する4分の3以上の国の敗退が決まっている。それでも、みな「4年後こそ」と思う。
普通なら、そんな弱い代表チームのスポーツは国民から見放されても仕方ない。ところが、1度も本大会に出場したことがない国にも、サッカーを国技とするところは多い。それぞれのレベルでサッカーを愛し、代表を応援しているのだ。
さあ、組み合わせも決まって、いよいよ最終予選が始まる。すべてのチームが出場を狙うアジアの最終予選は、世界中で最も厳しい予選でもある。勝ち負けが想定できるカードが1つもないのだから。私見を言えば、94年大会予選で3位に泣き、98年大会予選で3位に笑った経験から「4・5」枠の今回は出場できると思う。しかし、丸いボールはどちらに転がるか分からない。
6試合、一喜一憂できるのは、我々の特権だ。優勝を狙うイタリアやブラジルにはできない1試合ごとの「ハラハラ」「ドキドキ」を十分に味わうことで、日本のサッカーはまた一歩前進する。そんな気持ちを持って、2月9日を楽しみに待とう。
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荻島弘一(おぎしま・ひろかず)

1960年(昭35)東京生まれ。早大卒。84年日刊スポーツ新聞社入社。整理部、スポーツ部、日刊スポーツ出版社などを経て現在、スポーツ部デスク。
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