
2005年3月22日更新
湾岸の昇竜を襲った2つの衝撃
バーレーン大学・講師:海島 健
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| W杯アジア最終予選【バーレーン対イラン】バーレーンは強敵イラン相手に引き分けに持ち込んだ(撮影:たえ見朱実) |
「湾岸の昇竜」バーレーンのサッカー界を揺るがす2つの事件が、10日ほどの短い期間に立て続けに起きた。まず、エースストライカーのアラー・フバイルの負傷による長期の戦線離脱だ。
フバイルはアジア杯の得点王で、カタールリーグでも得点ランキング首位を走っている。イラン戦(2月9日)は累積警告による出場停止だったが、チームは無得点に終わり、関係者やファンにフバイルの不在を強く意識させた。続く北朝鮮、日本戦でフバイルが爆発してくれると願っていた矢先だけに、バーレーン国民の落胆は大きかった。
もう1つの衝撃はタカウィ・ユリチッチ監督の辞任。ガルフ杯やアジア杯でのバーレーンの大躍進は監督の手腕による部分も大きく、選手からの信望も厚かっただけにショックは小さくない。
最終予選を1試合終えたばかりのこの時期の辞任については、色々とうわさが流れていた。
(1)他チームからの高額のオファーがあった。
(2)バーレーン側との何らかの確執があった。
(3)要求レベルが高くなってきたファンからの解任キャンペーンによるもの。
辞任から数日たった3月12日、アラビア語の新聞「アルワサット」がユリチッチ氏のインタビューを掲載した。これによると(1)に関しては「オマーンに行くことになった。(報酬で)約2倍のオファーを受け、決めた。私はプロだから報酬を求めるのは当然だし、世界中で起こっていること」と説明した。(2)に関しては微妙な表現で、何らかの確執の存在をほのめかしている。
インタビュー記事を読む限り、うわさは根も葉もないという訳ではなかったようだ。それにしても、高い報酬を提示されたという理由で(確執もあったかもしれないが)他のチームに突然(よりによってこの時期に)移るというのは、かなり不自然な印象を与える。W杯出場のチャンスが十分にあり、最終予選終了後の方が監督としての名声や「市場価値」が上がる可能性もあった(もちろんその逆の可能性もあり、それを恐れたという推論も成り立つが)。
ただ、最近、格上のチームとの親善試合で勝てず、迎えた最終予選初戦があのイラン戦。フバイルを欠きながらも組織的な守備でスコアレスドローに持ち込んだ質の高いゲームだったが、ホームで引き分けたことにいら立ちを隠さないファンが多かったのも事実だ。
バーレーン在留邦人の目で見ると、ここ2、3年右肩上がりで成長し続けてきたこのチームを、上がり切った位置から見ているバーレーン国民が多い点が非常に気にかかる。格上のイランに勝てば、やはり「ジャイアントキリング=大物食い」で、引き分けという結果に対しては上々の滑り出しと受け止めるべきだと思うのだが、ファンは監督に大ブーイングを浴びせてしまった。それがユリチッチ氏の決断を早めてしまったのかもしれない。その意味では(3)は、当たらずとも遠からずといったところか。
そもそもフバイルを見出したのもユリッチッチ氏。頼みのフバイルの故障が監督の決断に微妙に影響を与えた可能性はある。
近年、急激に力をつけ「湾岸の昇竜」として日本でも警戒されているバーレーンだが、最も大事なこの時期に大変な混乱の中にある。
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海島健(うみしま・けん)

1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーン在住。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーンの試合を見続けている。湾岸の弱小国の時代から追いかけているので、今回の最終予選の組み合わせには感慨ひとしお。去年の中国・済南でのアジア杯日本戦もスタジアムで観戦した。日本とバーレーンがともに本大会へ行けることを心から願っている。現在はバーレーン大学で日本語の講師を務めている。
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