
2005年5月17日更新
湾岸の湿気の中、バーレーン竜が昇る?
バーレーン大学講師:海島健
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| W杯アジア最終予選【バーレーン−イラン】ホームではバーレーンのサポーターの熱狂的な声援も脅威に(撮影:たえ見朱実) |
W杯アジア最終予選の第4戦(6月3日)を前に出場各国はそれぞれ親善試合を行うが、バーレーンは相変わらずうまい組み方をしている。日本戦のちょうど1週間前の5月27日にサウジアラビアと対戦。両チームとも最終予選にコマを進めているモチベーションのきわめて高い国同士のマッチアップで、サウジアラビアにとっても仮想クウェートとのシミュレーション、バーレーンにとっても格上国とのがちんこ勝負と、両者にメリットがある。理想的な対戦と言えるのではないか。
以前にも親善試合の流れを見て感心したことがある。昨年のアジア杯の直前の期間だ。1次リーグで中国、カタール、インドネシアと同じ組になるや、バンコク−ソウルと移動しながら試合を行い、対タイ(7月5日、2−0勝ち)、対韓国(7月10日、0−2負け)とこなして北京入り。アジア杯開幕戦で17日に地元中国と戦い、1番難しいゲームを引き分けで切り抜けた。隣国カタールとはしょっちゅう試合をしていて、お互いに手の内を知り尽くしているのであえて試合はせず、中国、インドネシア対策をアウエーで行ったのである。
タイも同組に湾岸のオマーンがおり、韓国にいたってはクウェート、UAE、ヨルダンとすべてがアラブの国であったので、やはり相手にとっても利益十分の試合だったのだ。ちなみに対戦当時のFIFAランクも中国(64位)より韓国(20位)が、インドネシア(96位)よりタイ(64位)が上。心憎いほど計算された対戦国選びではないか。こういったしたたかな計画が、あの時のバーレーンの躍進(アジア杯4位)を下支えしていたのではないだろうか。アジア杯で日本を敗退寸前まで持ち込めた要因は、こういったち密な計画にもあるのかもしれないと最近思うようになった。
日本の場合はキリン杯がその役割を果たすことになる。ホームでペルー、アラブ首長国連邦(UAE)相手に組まれたが、バーレーンに比べると、はっきりとした意図が見えてこない。
そもそも、仮想バーレーンとしてUAEはあまり意味がない。UAEはここ1〜2年パッとせず、アジア杯、ガルフ杯(04年12月)とも1次リーグ敗退、W杯1次予選敗退という具合だ。FIFAランクもいつの間にか湾岸諸国では1番下。若手の有望株を抱えてはいるものの、2010年南アフリカW杯に向けてチーム作りを模索している段階なのだ。バーレーン人の多くも「何でUAEなんだ?」という反応だ。筆者もてっきりA組のクウェートか、ガルフ杯優勝のカタールとドーハあたりでするものだとばかり予想していたのだが。
もっとも日本代表のスケジュールを見ると「ここにキリン杯を持ってくるしかない」という声が聞こえてきそうなのも事実。
昨年のバーレーンの国際Aマッチ数33は世界一だそうだ。アジアの国相手の大一番を前にした時に、知恵とコネのすべてを尽くし親善試合を組むバーレーンの姿勢は見習うべきものがあるかもしれない。
バーレーン−サウジアラビア戦に話を戻そう。この試合、実は蒸し暑さ対策としても有効である可能性を秘めている。湾岸というと年がら年中蒸し暑いというイメージがあるかもしれないが、決してそうではない。バーレーンについていえば、気温は日本より常に高いのは事実だが1月にはセーターが必要なほど冷え込むこともよくある。
また、1番問題となるゲーム開始時間である夕方のことを考えてみよう。5月中旬の今、昼の気温は40度近いのだが夕方になると暑さも和らぎスポーツをするのにも問題ない。ただし、湿度が上がると運動をするのには適さない状況となる。湿度が急激に上がることが多いのが5月から6月にかけての時期なのである。
そういった意味でも気候に慣れている湾岸のプレーヤーが、本番に備えて5月27日にバーレーンでゲームをこなしておくことは意味がある。バーレーンサッカー協会としてもそれを見込んでのものなのだろう。
そう考えると、日本により必要だった蒸し暑さ対策は、バーレーンに先を越されてしまったと言える。去年のアジア杯での重慶の暑さが似ていると言えば似ているのだが(筆者は重慶で観戦していた)、年によってはもっとひどいこともある。
この文章を書いている5月中旬、例年より暑さがやってくるのが遅いのを見ると、試合当日の6月3日も結構、涼しいかもしれない。だが、6月3日より前に恐ろしいほどの湿気がやってくれば、湾岸の蒸し暑さに慣れていない日本は終盤にバテバテになる可能性がある。もし、湿気が5月27日より前にやってくるようなら、その暑さをチームとして親善試合で経験できるバーレーンは、さらに有利ではないだろうか。
毎年、湿気は突然やってくる。ジャイアントキリング(番狂わせ)をマナーマのスタジアムで見たのも、私の記憶ではほとんどいつも、あのうだるような暑さの中でだった。
暑ければ自国に有利になると考えている国民は多い。大事な日本戦を前にして、あの恐ろしい湿気がバーレーンに勝利を運んでくると信じ「もっと暑くなれ」とアラーの神にお祈りしている人が、私の周りには結構、多い。
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海島健(うみしま・けん)

1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーン在住。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーンの試合を見続けている。湾岸の弱小国の時代から追いかけているので、今回の最終予選の組み合わせには感慨ひとしお。去年の中国・済南でのアジア杯日本戦もスタジアムで観戦した。日本とバーレーンがともに本大会へ行けることを心から願っている。現在はバーレーン大学で日本語の講師を務めている。
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