
2005年5月26日更新
実は弱気? バーレーン・サポーター
バーレーン大学講師:海島健
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| ホームのイラン戦でのバーレーン・サポーター。今は弱気?(撮影:たえ見朱実) |
バーレーンと日本がW杯最終予選で同じ組になるという、筆者にとっては夢のようなことが現実に起きてしまった。そしてさらに信じ難いことに、W杯切符をめぐり両国がまさに命運を賭けて戦うという状況が目の前に迫っているわけだが、周囲のバーレーン・サポーターの筆者に対する言葉での挑発は、ここ1、2カ月、なぜかトーンダウンしている。
覚えている方も多いと思うが、昨年3月のアテネ五輪最終予選でも両国は激突しており、日本のホームで勝った時のはしゃぎぶりはすさまじく、3カ月くらいたっても「バーレーンは日本に勝った!!」というようなことをよく言われたものだ。
さらに同年12月上旬にW杯最終予選の組み合わせが決まり、同じ組になると挑発はさらにヒートアップし最高潮に。とりあえず活字にしてもかまわないものだけ羅列すると「アジア杯のリベンジをしてやるから見ておれよ。あの時のような運はもうないと思っていろ」(日本のアジア杯の優勝は強運のおかげと考えているバーレーン人は多い)「3−0!!」「6月のここでのゲームは(蒸し暑さで)日本人なんかヘロヘロになって、試合にならないよ」。
この勢いで台頭してきたのが同年12月に行われたガルフ杯での「絶対優勝」の声だった。W杯に出る前にタイトルを、というわけだ。ところがグループリーグ初戦、草刈り場に過ぎないと見られていたイエメンと対戦し、闘志が空回りしたかのような戦いで1−1のドローに。この時の怒りと落胆は見るのも気の毒なほどだった。
結局、絶対優勝のはずのガルフ杯は3位に終わり、優勝カタール、準優勝オマーンの後じんを拝した。
「ガルフ杯でさえ優勝できない」とある人は嘆いていたが、確かにこの国がタイトルを取ったのを見たことがない。毎年冬に4カ国を集めて首都マナマで行う首相杯ですら、栄冠は手にしていない。
こんな感じでガルフ杯あたりから、ちょっと元気がなくなってきて、W杯最終予選の前半戦を終えて日本とイランという前評判の高かった2カ国に次ぐ3位という、言わば予想された位置に収まってしまったことが「湾岸の昇竜も、やっぱり、この位置付けなのか」という“あきらめ”につながっているかのようにも見える。
そこで、大一番を前に彼らは何を考えているのか。何人かに比較的長時間、個人的に話を聞いてみることにした。
話を聞くにあたり、以下のようなことを主に質問してみた。
(1)前半戦を1勝1分け1敗の勝ち点4、4チーム中3位で折り返したが、結果には満足しているか。
(2)3月30日の日本戦の感想。試合のポイント。印象に残った選手は。
(3)6月3日の予想。その根拠は何か。
(4)6戦全て終わった段階で4チーム中何位になりそうか。W杯には行けると思うか。将来のバーレーンサッカーはどうなる。
(1)に関しては、意外と多くの人が満足と答えた。日本戦敗戦のショックがもう忘れられている時期なのだろうが…。納得できるコメントとしては「アウエー(北朝鮮)をひとつモノにして、強いイランにドロー。日本に負けたとはいえ、0−1だったのは立派。そりゃ満足さ」。印象としては前出の“あきらめ”の感情からくる満足のように見える。
(2)に関しては、日本に対するアドバイスまで飛び出している。「日本は流れの中で決定的なチャンスを作れていなかった。イランの方がいい」「アレックス(三都主)側(左サイド)からの攻撃ばかりが目立った。サイドチェンジをもっとしないと、バーレーンは崩せない」「日本はもっと遠目からのシュートも打つべき」など。あの試合では、やはりアレックス(三都主)が1番印象に残ったと多くの人が口にした。
(3)は、ほとんどの人がわからないと答えた。
(4)についても、かなり悲観的。3位がほとんどで、4位になると答えた人もいた。4位になると答えた人は「まだバーレーンは組織としては未熟。北朝鮮の方が組織としては優れていた」とまで言っている。3位になった場合プレーオフを2回勝ち抜かなければならないわけだが、その2回を勝ち抜く自信を持っている人はいなかった。
03年にベストムーバー賞を取り新興勢力ともてはやされ2年以上たったが、そういった視点に立って子細に検討すると、やはり強豪とまでは言い切れない面が見えてくる。たとえばアジア杯。結果だけを見ればアジア4位は大健闘だが、実はいつもぎりぎりのところを切り抜けてきたという面がある。アジア杯の予選は前半の3戦で1勝1分け1敗。後半のバーレーン・ラウンドで盛り返し3連勝、ミャンマー、マレーシアを押さえ2位通過だった。アジア杯本戦の1次リーグでは、地元中国に引き分けたのは見事だったが、その当時ガタガタの状態だったトルシエ・カタールに引き分け。3戦目のインドネシア戦をうまくモノにして、またもや2位通過だった。
決勝トーナメントではまずウズベキスタンにPK勝ちして、日本戦での惜敗。3位決定戦でもイランに敗れ、試合終了間際にはイラン−バーレーンではよく見る殴り合いを北京でやらかしてくれた。アジア杯トータルでは、PK勝ちを引き分けとすると1勝3分け2敗。決勝トーナメントでは0勝1分け2敗となる。
こうしてみると、04年9月には44位にまで昇りつめたFIFAランクが上げ止まりの状態なのも、当然なのかもしれない。
このようにガルフ杯から、W杯アジア最終予選にかけて少し自信を失いかけているバーレーン国民だが、27日の親善試合、サウジアラビア戦の結果次第ではひょう変するかもしれない。「親善試合は結果よりも内容」などといわれることもあるが、今のバーレーン・サポーターには適用できない。強豪国からの勝利こそが、最高の元気の源となる。
「日本とバーレーンがともにドイツへ」(プレーオフを含めて)という筆者の基本的スタンスは変わらないので、もう少し元気を出してほしいものだ。…というようなことを本気で願っていいようないけないような、あまりに複雑な気分の今日この頃である。
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海島健(うみしま・けん)

1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーン在住。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーンの試合を見続けている。湾岸の弱小国の時代から追いかけているので、今回の最終予選の組み合わせには感慨ひとしお。去年の中国・済南でのアジア杯日本戦もスタジアムで観戦した。日本とバーレーンがともに本大会へ行けることを心から願っている。現在はバーレーン大学で日本語の講師を務めている。
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