
2005年6月2日更新
サウジアラビア戦で見えたバーレーンの実情
バーレーン大学講師:海島健
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| ホームのイラン戦でのユスフ(撮影:たえ見朱実) |
日本がキリン杯2戦目でアラブ首長国連邦(UAE)と戦った5月27日、バーレーンはリヤドに乗り込んで、サウジアラビアと親善試合を行った。
3月30日の日本戦で痛恨のオウンゴールを決めた司令塔のMFサルミーンはカタールリーグ所属ということもあって欠場。エースFWのアラー・フバイルは故障で予選を通じて出場できず、まさに金と飛車抜きで戦わなければならない苦しい状況だった。
システムは日本戦と同じ3−5−2だったが、後半は左サイドのイサが下がって4−4−2を試していた。サルミーンの位置には、3月30日の日本戦、累積警告で出場できなかった、本来はFWのユスフ。
手の内を知り尽くした両チームの試合はやはり相手の長所をつぶし合っていた。バーレーン得意の鋭いカウンターはそれほど多く見られなかった。前半にPKで先制したが、その後、ユスフのパスがカットされ、そこから失点し追いつかれた。後半に入るとサウジアラビアのパスの供給源であるカフタニをイエローカード覚悟で潰しにかかる。後半27分にはユスフの打ったシュートを相手GKがはじき、FWジャマルの前にボールが転がる絶好のチャンスだったが、ジャマルがふかしてしまい得点にならず。同29分にはスーパーサブのFWナセルを投入し豊富な運動量で前線からプレスをかけたが、結局、得点はできず1−1で引き分けた。
ちょっと前だったら、サウジアラビア相手にドローなんて場合は「よくやった、よくやった」の拍手があったのだが、この日一緒にテレビ観戦していた皆さんは、不満そうに席を立ち家路に着いた。隣のマナフ君も「失望した」と水タバコをくゆらす。連係もいまひとつで、流れの中での得点がなかったことと、やはり得意のカウンターが見せられなかったのだから仕方がないのかもしれないが・・・。
翌日のバーレーンの新聞では「パスが不正確なのが目立った。中盤から前線へのボールの供給をもっと増やさないと、FWの自力での突破に頼るだけになる」と厳しい評価が掲載されていた。
本来なら2月のイラン戦のようにユスフとアリの2トップで、サルミーンがトップ下という組み合わせだろう。ところが今回はサルミーンが不在で、攻撃を組み立てるためにユスフを1列下げるしかなかった。
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| 日本戦でのマルズーキ(撮影:宇治久裕) |
結局、サルミーンの穴を、本来FWのユスフで補うのは無理があったということだろう。それを補うために、サウジアラビア戦の前後半、3−5−2でも4−4−2でも右サイドのDFマルズーキの上がりが目立った。守備でも相手選手を厳しくチェックし、ボールをかすめ取るなど活躍。さすがに暑さの中、くたくたになったようで後半10分に交代した。攻撃の核が不在の中、少しでも攻撃力を増そうというチームの意図が見てとれた。
サウジアラビア戦では、ユスフ以外に注目に値する選手がいた。サルミーンの台頭で少し影の薄くなっていた元シリア国籍のMFファルハンだ。MFババが累積警告で日本戦出場停止のため出番が回ってきた。1次予選では6試合中2試合に途中出場。守備のうまさで守備的MFなどと考えられているようだが、筆者は後半20分に見せたような攻撃参加のうまい選手というイメージが強く、またMFとしてのボール供給も彼が1番正確かもしれない。今まで見た試合でもファルハンの目立つゲームは少なくなく、大一番では貴重な戦力になることは間違いないだろう。
さらに、この試合でサウジアラビアのカフタニをイエローカード覚悟で潰しにかかったことから、中村俊輔に対しても同様の戦術で来ることが予想される。
バーレーンが日本に勝てるかどうかは、中村潰しがうまくいくかどうかと、本番直前に合流したサルミーン、累積警告明けのユスフと、伏兵ファルハンの出来次第という感じだ。
試合翌日の5月28日、午前の授業を終えて携帯を見るとかなりのミスコール。しつこく5回もかけてきたサッカー好きのジャファの話題は昨日のサウジアラビア戦のことに違いない。かけ直してみると、案外、上機嫌だ。電話の理由も想像していたのとはちょっと違っていた。
「オー、ケン。ご機嫌いかが?? UAE相手になんじゃありゃ? バーレーンもいまいちだけど、あれ見ると元気がでてくるよ。6月3日も・・・見えてきたね!!」
日本−UAEはこちらでもドバイスポーツでライブで放映されてたが、こちらの人にインパクトを与えるようなプレーもほとんどなかった。バーレーンにとってはUAEは、ここ数年勝った記憶しかなく、手元にある資料を見ても、やはり98年のガルフ杯で負けてからは4連勝中で、引き分けすらない。ジャファが機嫌がいいのも当然かもしれない。
もっとも日本がペルーとUAEに連敗してバーレーンに乗り込んでくることに、警戒している人たちだっている。前出のマナフ君は言う。
「それってわざとでしょう。ボロボロだと見せかけて、こっちを油断させようとしているでしょう。アラブではよくあるよ、そういうこと」。
また日本がヨーロッパ組を6人(稲本、中田英、中村、小野、中田浩、柳沢)呼ぶというニュースもこちらのファンを震え上がらせているのも事実(小野は欠場の可能性が強くなったが)。
日本とバーレーン、ともに直前の親善試合は、本番に不安を残す内容だった。ポーカーで言えば手の内はともにワンペアがせいぜいで、必死にポーカーフェイスを装いつつ、ともに疑心暗鬼になっている。決戦直前の日本とバーレーンはそんな感じかもしれない。
それがW杯予選というものなのだろうが。
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海島健(うみしま・けん)

1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーン在住。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーンの試合を見続けている。湾岸の弱小国の時代から追いかけているので、今回の最終予選の組み合わせには感慨ひとしお。去年の中国・済南でのアジア杯日本戦もスタジアムで観戦した。日本とバーレーンがともに本大会へ行けることを心から願っている。現在はバーレーン大学で日本語の講師を務めている。
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