|
|
| 左太もも裏にテーピングをしながらもグラフとの死闘に粘り強くボールを追い続けた伊達=1996年4月28日東京・有明テニスの森公園(写真=下田雄一)
|
|
|
伊達は満身創痍(そうい)だった。ツアーの連戦でたまった疲労は、前日のフーバー戦でピークに達した。筋肉痛と発表された左足のふくらはぎは、実は肉離れを起こしていた。テーピングでぐるぐる巻きにされた脚は「どのぐらい動けるか分からない」という状態。その日の朝も練習はできなかった。
世界7位の伊達とはいえ、女王グラフは別格だった。過去6戦全敗。1セットを奪うのがやっとだった。それも、その日まで96年ツアー無敗。前年から20連勝中のグラフに、伊達がケガを抱えて勝てるなど、誰も想像していなかった。
第1セットは、あっという間に0−5となった。有明コロシアムに押し掛けた1万人近い観客に、暗いムードが漂った。しかし、そこから伊達の逆襲が始まる。肉離れに加え、ゲームも取れない劣勢で、逆に伊達は開き直った。「できる限りのことをやるしかない」。無心が余計な緊張をなくし、第1セットを大逆転の末に7−6のタイブレークで奪った。 |