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「初恋の人にやっと巡り合えた」 谷亮子 谷亮子(シドニー五輪柔道女子48キロ級金メダリスト)
2000年9月16日付 号外
2000年9月16日付号外
やったね!! 田村 金
YAWARA、ついに金!田村亮子(25=トヨタ自動車)が、金メダルを獲得した。決勝でブロレトワ(ロシア)を内またで撃破。バルセロナ、アトランタでも手が届かなかった五輪の金メダルを、とうとう勝ち取った。今大会の日本金1号となり、日の丸選手団に大きな弾みをつけた。
(日刊スポーツ2000年9月16日付号外)

 笑わない−。その表情で金メダルは決まっていた。最大の難敵とされた相手を破った。それでも谷亮子は目をつり上げ、口を真一文字に閉じて青畳を後にした。スタンドからの大声援に目もくれず、集中力を高めたままで控室に戻った。間違いない。記者席で笑わない谷をみて、悲願達成を確信していた。
 00年9月16日。シドニー五輪柔道女子48キロ級準決勝。谷は北朝鮮のチャ・ヒョニャンを旗判定の末に倒した。悲願の金メダルまで1勝と迫った。バルセロナ、アトランタ、2大会とも谷はここまでたどり着いていた。そして、金メダルには届かなかった。この時、だれもが一瞬、過去の悲劇を思い浮かべたに違いない。悔し涙で表彰台の2番目に立った谷の姿を。
笑うのは決勝で勝ってから
 「たぶんこれをしないとシドニーでまた自分の目標を達成できないだろうなと思ったから」。五輪3カ月前、谷は過去2回の五輪のビデオを見返した。悔しい思いを忘れるため、決して自ら望んで目にすることはなかったシーンの数々。「なぜ決勝までいって目標を達成できなかったのか」。1回戦から見続けて勝てなかった理由を探すとすぐに分かった。
 準決勝直後の自らの表情を疑った。バルセロナでは金メダル最有力候補だったブリックス(英国)に勝った後、うれし泣きをしていた。アトランタでは最大のライバルとされたサボン(ブラジル)を破った後、笑顔でガッツポーズをしていた。「私の目標がここで1度達成され、気持ちが途切れていた。これで銀メダルを初めて深く受け入れられた」。その翌日には自費でシドニーを視察した。建設途中の試合会場に足を運んだ。準決勝を突破した後の自分の表情を想像した。「笑うのは決勝で勝ってから。テーマは最高で金、最低でも金」。過去2大会で立ちはだかった壁を準決勝で乗り越えた。
柔道女子48キロ級決勝 田村亮子はブロレトワに内またを決め、金メダル獲得
柔道女子48キロ級決勝 田村亮子はブロレトワに内またを決め、金メダル獲得=2000年9月16日オーストラリア・シドニー(写真=鹿野芳博)
金メダルの先−「前人未踏」への挑戦
柔道女子48キロ級 金メダルにキスする田村亮子
柔道女子48キロ級 金メダルにキスする田村亮子=2000年9月16日オーストラリア・シドニー展示場ホール(写真=下田雄一)
 決勝。それまでの苦戦がうそのようだった。開始から組み手争いでブロレトワ(ロシア)を追いつめた。「無心でした」。36秒。内またでブロレトワを青畳にたたきつけた。1本勝ちが分かると、両こぶしを挙げた。飛び上がった。泣いた。笑った。あらゆる手段で喜んだ。「初恋の人にやっと巡り合えた」。金メダルにキスをしていた。
 後日、谷は尊敬する山下泰裕氏に「決勝は無の状態だったんじゃないか。自分も金メダルを獲った時、そうだった」と明かされた。その言葉を素直に理解できた。いや、共感していたという方がよかった。「勝つ瞬間の勝利者があるべき心境は同じなんですね」と納得していた。それまで箱に入れたままだった2個の銀メダルを取り出し、金メダルと3つ並べた。彼女には銀も輝いてみえた。
 金メダルの先に新たなテーマがみえた。記録にこだわる。自ら「前人未踏」の言葉を口にするようになった。世界選手権では史上初の6連覇と記録を更新中。アテネでは日本女子初の2大会連続金メダルを狙う。97年パリ世界選手権から00年福岡国際まで谷は49連勝。柔道担当として1度として負けた試合をみたことがなかった。谷亮子に不可能はない。そのことを身を持って知っている。
 

【藤中栄二】


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